「多様性」「持続可能性」を促進...F1ステファノ・ドメニカリCEOに聞く、若い新規ファンの獲得戦略
DRIVE TO WIN
ハミルトンはロンドン近郊のブルーカラーの町で育ち、父親は息子の夢をかなえるために複数の仕事を掛け持ちし、息子がレースで使ったカートを夜通し修理していたという。スペインの新聞ASによれば、ハミルトンは「普通の労働者階級の家庭で育った私が、今ここにいる。あり得ない話だね。ライバルたちはずっと金持ちだ」とも語っている。
出場にかかる莫大な資金
ドメニカリはF1の世界に経済的な「参入障壁」があることを認めつつも、「今F1に参戦しているドライバーの半数以上は一般家庭の出身だ」と反論した。いい例がアルピーヌに所属するフランス人ドライバー、エステバン・オコンの場合だ。彼の父親は自動車修理工場を経営していたが、息子をレーサーにするために事業も家も手放した(その後はキャンピングカーで暮らし、最初のうちは下級レースで各地を転戦する息子に付き添ったという)。
F1の舞台に立つまでには莫大な資金が必要だ。メルセデスF1チームのトト・ウォルフ代表兼CEOは15年に、ビジネスメディアのラカンターにこう語っている。「優れた選手がいたとして、まずはFIAカート世界選手権のジュニア、シニアを経て一般の国際レースまでに100万ユーロ(約1億5000万円)はかかる」。それからF4、F3、F2と順調に進んでいけば「F1は目の前だが、それでもあと200万~300万ユーロは使わないと到達できない。合計すると700万~800万ユーロになる。まあ、ざっと800万ユーロ(約12億円)と言っておこうか」
フロリダ州出身のローガン・サージェントの場合は、海運で財を成した裕福な親の後ろ盾があった。地元のカート選手権で活躍した後、12歳で兄ダルトンと父ダニエルと共にF1の夢を追って渡英。今はロンドンを拠点とし、アメリカ人として昨年初めてF2で優勝した。それで今年はウィリアムズ・レーシングのF1チームに招かれた。「両親のおかげだ。本当に世話になった」と本人も親の恩を認めている。
マイアミGPの会場はマイアミ郊外のハードロック・スタジアムを囲む専用の仮設サーキット。今年は27万人のファンが押し寄せるという人気ぶりだった(昨年の初開催時より3万人増えた)。中にはジェフ・ベゾスやイーロン・マスクのような大富豪もいれば、俳優のトム・クルーズ、カンザスシティ・チーフスのクオーターバック、パトリック・マホームズの姿もあった。超人レーサーたちと怪力マシンを一目見たくて、みんな集まってくる。