ジャニーズ性加害問題とメディアの責任...テレビ界からはどう見える?デーブ・スペクターに聞く
The Exploded Open Secret
80年代から日本のワイドショーでコメンテーターを務め、国内外のテレビ事情に詳しいデーブ・スペクター HAJIME KIMURA
<「テレビ局のだらしない面もあれば、文化の違い、恥の文化、訴えない文化、忖度の文化もある」――デーブが読み解く「複雑な背景」とは>
今年3月、英公共放送のBBCがジャニーズ事務所の創業者兼社長を務めた故・ジャニー喜多川(2019年に87歳で死去)の所属タレントへの性加害問題をドキュメンタリー番組で報じて以降、複数の被害者が実名・顔出しで告発し、5月14日にはジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が謝罪動画を公開するなど波紋が広がっている。
喜多川の性加害疑惑については、1980年代後半に元所属タレントが自著などで明かし、99年に週刊文春が被害者の証言を得てキャンペーン報道を展開。ジャニーズ事務所側は発行元の文藝春秋を名誉毀損で訴えたが、03年、東京高裁は「セクハラに関する記事の重要な部分については真実」と認定した。
しかし今年4月12日、元ジャニーズJrのカウアン・オカモト(26)が会見し、「2012~16年に15~20回ほど被害を受けた」と告発。判決後も喜多川の性加害疑惑について日本メディアが積極的に報じてこなかった結果として、今回のようには社会問題化せず、新たな被害者を生んでいた可能性がある。
長年にわたって未成年への性加害が放置される事態を招いたことについて、ジャニーズ事務所とメディアの責任が問われるなか、テレビ業界の内部から現在の状況はどう見えるのか。米ABCテレビの元プロデューサーで、80年代から日本のワイドショーでコメンテーターを務めるデーブ・スペクターに、本誌・小暮聡子が聞いた。
――故・ジャニー喜多川の性加害問題について、国内外のテレビ界に詳しいデーブさんはどうみているか。
BBCのレポーターは真面目に報じたとは思うんだけど、今回報じられていることはみんな知ってるくらい有名な話で、驚きすぎ。冷静さがなくて、これは僕、ツイッターでも言ったことですが、欧米の価値観の押し付けだと思った。
欧米は、特にアメリカは訴訟好きで、すぐに訴える。日本には事実が正しくても、根拠があっても、すぐには訴えない文化がある。それに、恥ずかしいという文化もある。被害に遭ったら、それをあまり知られたくないという気持ちがある。日本では被害者の顔出し、名前出しの告白というのは極めて少ない。
比較として1つ分かりやすいのは、監禁事件。日本でも過去に事件があったが、被害者の女の子は表に出てこない。アメリカは逆で、こんな目に遭ったわよ!って、メディアにもどんどん出てくる。それはヒーリングの一環でもあるし、開き直るというか。「私の人生、あなたに何されようと幸せになってやるわよ」と、犯人に屈服しないところがある。だけど、日本にはそういう文化がない。