最新記事
戦闘機

F-16がロシアをビビらせる2つの理由──元英空軍司令官

Russia Will Be 'Nervous' Over F-16s for Two Reasons: Retired Air Marshal

2023年5月23日(火)19時21分
エリー・クック

F-16は戦いの土俵そのものを変えてしまう? TV5MONDE/YouTube

<F-16戦闘機に最先端兵器がついてくるだろうことはもちろん、F-16が将来配備されるだろうと思うだけでこれまでのロシアの軍事計画すべてが狂い、それがロシアを削って敗北させる>

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は以前から、西側諸国に戦闘機の供与を求めてきたが、G7広島サミットでついにジョー・バイデン大統領のお墨付きを得た。元イギリス空軍の上級司令官で中将だったグレッグ・バグウェルによれば、ウクライナがF-16戦闘機を持つ利点の第一は、優れた航空電子機器を搭載するより現代的な戦闘機を手にする「戦術的利点」だ。これには強力な兵器システムがついてくる可能性も高い。

「(F-16)戦闘機と共に兵器システムが導入されれば、ウクライナはまったく新しく高度で射程も長いさまざまな武器を持つことになる」と、バグウェルは述べた。

イギリス国防省は5月11日、空中発射巡航ミサイル「ストームシャドウ」をウクライナに搬送したことを認めた(数は明らかにしなかった)。これによりウクライナ軍は、現時点で最も射程が長いミサイルを手に入れた。ウクライナ軍がより長距離の攻撃能力を手に入れるということはそれだけで、「ウクライナ国内におけるロシア戦力の配置や作戦のあり方を変えることになる」とバグウェルは指摘する。

英ロンドン大学キングスカレッジ・フリーマン航空宇宙研究所の共同ディレクター、デービッド・ジョーダンは、F-16にはさまざまな空対地兵器を搭載することができると指摘する。中距離空対空ミサイル「AIM-120」や、統合直接攻撃弾(JDAM)、空対地の対レーダーミサイル「AGM-88 HARM」などだ。

配備前からロシアの神経を削る

もちろん、ウクライナ空軍が直面する課題も少なくない。F-16の運用に必要な人員すべてを訓練するには時間がかかるうえ、輸送や整備についても考慮すべき点が多々ある。ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使は5月22日、テレグラムへの投稿で、「ウクライナには、F-16を使うためのインフラが存在しない。パイロットや整備要員も不十分だ」と書いた。

それでも、ウクライナにとってF-16は長期的な国家防衛のために必要だと、専門家たちは考えている。

F-16をもつもう1つの利点は、ウクライナ側が新たに手に入れる長距離攻撃能力に、ロシアが「配備前から神経を尖らせる」点だとパグウェルは言う。「ロシアは、F-16配備で起き得る変化や、それが戦闘にもたらす影響について、配備前から神経を尖らせるだろう」

もちろんF-16の供与は、それだけでウクライナ側の勝利を約束するものではない。それでも、ロシアはこれまでと同じ戦略は使えなくなる。計画変更を迫られたロシア政府は、最終的に「劣勢に陥る」だろう、とバグウェルは語った。
(翻訳:ガリレオ)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、インド向けエネルギー・防衛装備の販売拡大を検討

ビジネス

ECB、近く物価目標達成も 不確実性高く政策予測困

ビジネス

IMF、日本の成長率見通し引き下げ トランプ関税の

ビジネス

IMF、新興国の成長率見通し引き下げ 資金調達問題
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 4
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 5
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 6
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ペー…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 9
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 10
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中