最新記事
ウクライナ

プーチンと戦うもうひとつの手段 ......ノルウェーの「空飛ぶ病院」がウクライナの負傷兵を救護!

2023年4月27日(木)18時41分
青葉やまと

「空飛ぶ病院」が記録的スピードで負傷者救護 Youtube

<医療機関が十分に活動できないウクライナから、多くの負傷者を収容。EU域内など高度な体制の整う施設へ搬送し、命をつないでいる>

傷ついたウクライナの兵士を救うため、ノルウェーのスカンジナビア航空(SAS)機による航空医療搬送(メディバック;メディカル・エバキュエーション)が行われている。ウクライナ国外の病院へ移送しながら、同時に手当を施すことが可能だ。

同社が所有するボーイング737小型ジェット旅客機を改装したもので、「フライング・ホスピタル」の愛称で呼ばれる。内部には通常の座席列の代わりに、2段式の治療用ベッドが複数設置されている。民間の乗員によって運航され、医療スタッフが同乗し飛行中の治療・看護に当たる。ノルウェーとEUが共同で事業を実施しており、これまでに約2000人の負傷者を救護した。

AFP通信は「空飛ぶ病院」として同機を取り上げている。

前例ない規模の搬送体制、「記録的な速さ」で確立

同機は、一度に最大20人の負傷兵を収容・輸送する。担架サイズの簡易的な病床のほか、人工呼吸器や輸血装置、血圧や酸素飽和度などを読み取るバイタルサインモニターなどが備わる。ノルウェー軍の医療部隊に所属するホーコン・アサック中尉は、AFPに対し、「空中を飛ぶ小さなICU(集中治療室)のようなものです」と例えている。

EUの緊急対応調整センター(ERCC)に務めるフアン・エスカランテ氏は、AFPの取材に応じ、「ウクライナからの要請を受け、この枠組みを立ち上げました......ウクライナの病院の負荷を軽減する目的があります」と説明している。大陸レベルでの航空医療搬送としては前例のないものだったが、「記録的なスピードで」実施に移されたという。

記事によると、ある輸送では、ウクライナから70キロの地点にあるポーランドのジェシュフ・ジャションカ空港でウクライナの負傷兵を収容した。治療を続けながら2日間をかけて飛行し、アムステルダム、コペンハーゲン、ベルリン、ケルン、そして最終目的地であるノルウェーのオスロまで負傷者をそれぞれ送り届けたという。

負傷者の救護は、ヨーロッパがロシアに対し、武器を使わず対抗する手段でもある。スペインのマルガリータ・ロブレス国防相は昨年、ウクライナの人々を収容する北東部サラゴサの軍事病院を訪れた際、治療は「プーチンと戦うもうひとつの手段です」と語っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

グリーンランド、米の将来に関わる可能性 安全保障上

ワールド

カナダ首相、トランプ氏と電話会談の用意 「主権国家

ワールド

ウクライナ鉱物協定、近く署名へ 発電所の米所有巡り

ワールド

ロシア・ウクライナ、攻撃の応酬 「石油施設で火災」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 3
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 4
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 7
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 8
    トランプの脅しに屈した「香港大富豪」に中国が激怒.…
  • 9
    止まらぬ牛肉高騰、全米で記録的水準に接近中...今後…
  • 10
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 4
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 9
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 10
    「気づいたら仰向けに倒れてた...」これが音響兵器「…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中