スーダンを翻弄する、「野心丸出し」2人の軍人による「醜い権力争い」
Chaos in Sudan
ケニア・ナイロビのジョモ・ケニヤッタ国際空港に到着したスーダンからの避難民。ケニア国防軍(KDF)による手続きを待つために軍用機で待機(2023年4月24日撮影)Thomas Mukoya-REUTERS
<「エジプトの影がちらつく国軍の指導者」vs「アラブ諸国とつながる軍事組織RSF司令官」。2人の男の確執が国を地獄に突き落とす>
スーダンの事実上の支配者であるアブデル・ファタハ・ブルハン将軍と、準軍事組織・即応支援部隊(RSF)を率いるモハメド・ハムダン・ダガロ司令官。この2人の軍人の確執がいつか大きな衝突をもたらすことを、専門家は長い間危惧してきた。
4月18日の時点で、国軍とRSFの衝突による死者は185人を超えた。首都ハルツームには散発的に銃声が鳴り響き、大規模な停電が起こり、空港では民間機が被弾した。衝突はエチオピアとの国境地帯にも及んでいるらしい。
ブルハンとダガロの対立が表面化したのは、2022年12月5日に締結された、民政移管に向けた枠組み合意がきっかけだ。
この中でRSFは国軍に統合されると書かれているが、軍はこれを2年でやり遂げると言い、RSFは10年かかると主張。RSFを吸収した後の軍で、ダガロがブルハンと同等の地位に引き上げられる案については、イスラム主義者らの間で異論が噴出した。
イスラム主義者は、19年のクーデターで失脚した元大統領オマル・ハッサン・アフメド・アル・バシルを長年支えてきた。政変で一度は政府から一掃されたが、ブルハンは再び政府や軍にイスラム主義者らを取り込み始めている。
バシル体制を敵視してきたダガロは、この動きに懸念を深め、4月1日までに移管に向けた最終合意がまとまり、11日までに新しい文民政権が誕生するというスケジュールは無に帰した。
ブルハンとダガロは、21年10月のクーデターで軍民共同統治を倒したときは手を組んだが、その後は「民政移管を推進」という看板に隠れて、権力闘争を繰り広げてきた。
「ダガロは民政移管を支持すれば、(暫定統治評議会の)支持を得て、権力の座を手にできると思っている」と、スーダン人弁護士のアハメド・ジェイリは語る。「今回の危機でも、民主化を推進しているために(軍に弾圧される)被害者を演じてきた」
ダガロ率いるRSFは、「軍が(RSFの)基地にいわれのない攻撃を仕掛けてきた」ために「適切な対応をせざるを得なかった」と、反撃を正当化する声明を出した。
米国の調停は効果なし?
軍の兵力は12万~20万人で、RSFは3万~10万人程度と、力の差は圧倒的だが、衝突が早期に収まる気配はない。ダガロは、ブルハンが裁判にかけられるか「犬死にする」運命だと語っているし、ブルハンはRSFを「反乱組織」だとして解散を命じた。