最新記事
スーダン

スーダンを翻弄する、「野心丸出し」2人の軍人による「醜い権力争い」

Chaos in Sudan

2023年4月25日(火)13時38分
ノズモット・グバダモシ(ジャーナリスト)
スーダン避難民

ケニア・ナイロビのジョモ・ケニヤッタ国際空港に到着したスーダンからの避難民。ケニア国防軍(KDF)による手続きを待つために軍用機で待機(2023年4月24日撮影)Thomas Mukoya-REUTERS

<「エジプトの影がちらつく国軍の指導者」vs「アラブ諸国とつながる軍事組織RSF司令官」。2人の男の確執が国を地獄に突き落とす>

スーダンの事実上の支配者であるアブデル・ファタハ・ブルハン将軍と、準軍事組織・即応支援部隊(RSF)を率いるモハメド・ハムダン・ダガロ司令官。この2人の軍人の確執がいつか大きな衝突をもたらすことを、専門家は長い間危惧してきた。

4月18日の時点で、国軍とRSFの衝突による死者は185人を超えた。首都ハルツームには散発的に銃声が鳴り響き、大規模な停電が起こり、空港では民間機が被弾した。衝突はエチオピアとの国境地帯にも及んでいるらしい。

ブルハンとダガロの対立が表面化したのは、2022年12月5日に締結された、民政移管に向けた枠組み合意がきっかけだ。

この中でRSFは国軍に統合されると書かれているが、軍はこれを2年でやり遂げると言い、RSFは10年かかると主張。RSFを吸収した後の軍で、ダガロがブルハンと同等の地位に引き上げられる案については、イスラム主義者らの間で異論が噴出した。

イスラム主義者は、19年のクーデターで失脚した元大統領オマル・ハッサン・アフメド・アル・バシルを長年支えてきた。政変で一度は政府から一掃されたが、ブルハンは再び政府や軍にイスラム主義者らを取り込み始めている。

バシル体制を敵視してきたダガロは、この動きに懸念を深め、4月1日までに移管に向けた最終合意がまとまり、11日までに新しい文民政権が誕生するというスケジュールは無に帰した。

ブルハンとダガロは、21年10月のクーデターで軍民共同統治を倒したときは手を組んだが、その後は「民政移管を推進」という看板に隠れて、権力闘争を繰り広げてきた。

「ダガロは民政移管を支持すれば、(暫定統治評議会の)支持を得て、権力の座を手にできると思っている」と、スーダン人弁護士のアハメド・ジェイリは語る。「今回の危機でも、民主化を推進しているために(軍に弾圧される)被害者を演じてきた」

ダガロ率いるRSFは、「軍が(RSFの)基地にいわれのない攻撃を仕掛けてきた」ために「適切な対応をせざるを得なかった」と、反撃を正当化する声明を出した。

米国の調停は効果なし?

軍の兵力は12万~20万人で、RSFは3万~10万人程度と、力の差は圧倒的だが、衝突が早期に収まる気配はない。ダガロは、ブルハンが裁判にかけられるか「犬死にする」運命だと語っているし、ブルハンはRSFを「反乱組織」だとして解散を命じた。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EUが排ガス規制の猶予期間延長、今年いっぱいを3年

ビジネス

スペースX、ベトナムにスターリンク拠点計画=関係者

ビジネス

独メルセデス、安価モデルの米市場撤退検討との報道を

ワールド

タイ、米関税で最大80億ドルの損失も=政府高官
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中