「ドルを超える日はまだ遠い」人民元を過大評価しなくていい理由について
A REALITY CHECK FOR THE RENMINBI
人民元が世界の基軸通貨となるには資本規制の緩和が不可欠 XU JINBAIーFUTURE PUBLISHING/GETTY IMAGES
<人民元の国際化が本格化し始めた。中国がドルによる世界支配から脱したいと考えているのは周知の事実だが、それほど簡単なことではない>
国の通貨・人民元の国際化が、ようやく本格化し始めたようだ。
中国とブラジルは3月29日、貿易決済はドルではなく、それぞれの自国通貨を使うことで合意。前日には中国海洋石油集団(CNOOC)とフランスの石油最大手トタルエナジーズが、液化天然ガスの取引を初めて人民元建てで完了した。
ロシアのプーチン大統領は最近、中国に限らずアジア、アフリカ、中南米諸国との貿易で人民元を決済手段にしたいと表明。サウジアラビアも対中石油輸出の一部を人民元建て決済にする可能性について、昨年から中国と協議している。
中国が人民元を国際通貨にして、ドルによる世界支配から脱したいと考えているのは周知の事実だ。
将来起こり得るアメリカ主導の経済制裁への地政学的な防御策と受け取られがちだが、人民元が世界の主要決済通貨の1つになれば中国経済にも大きな利益になるだろう。
私のグループが進めている研究によれば、韓国企業の対中輸出に占める人民元建ての割合は2008年以前の0%から20年には6%近くまで上昇した。
16年10月、人民元はIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)通貨バスケットに採用され、ドル、ユーロ、円、ポンドに仲間入りした。
こうした重要な進展はあるものの、人民元がドルの地位を脅かしている度合いを過大評価してはならない。韓国の対中輸出のうちドル建ての割合は、06年の98%近くから20年には約87%に低下したが、ドルの優位度はやや下がっただけで、中韓の2国間貿易でさえも人民元がドルに置き換わることはありそうにない。
しかも同時期の韓国の対米輸出の約99%はドル建てで、人民元建ては皆無だ。さらに、韓国の対日輸出はドル建てと円建てがほぼ同じ45%、残りはウォンとユーロ建てだ。
世界ではアメリカが当事国ではない貿易でもまだドル建てが支配的だが、人民元建ては中国との貿易取引にほぼ限られる。