アメリカに避難した27万人のウクライナ難民に迫る、タイムリミット
AN IMMIGRATION LIMBO
「なんらかの措置が打ち出されない限り、アメリカを出ていくほかなくなる。でも、ウクライナには戻れない。私たちの村はロシアとの国境に近すぎる」と、ナタリアは語る。「滞在できる期間が延びれば、その間にウクライナが安全になって帰国できるかもしれない」
マリアの夫とナタリアの夫は、いずれも妻より遅れて昨年夏にアメリカに入国することができた。2人ともU4Uの対象になったのだ。
しかし臨時許可の期限が延長されなければ、家族はいずれ難しい決断に直面するかもしれない。家族全員でアメリカを離れるのか。それとも滞在資格を持つ者は残るのか。
DHSはウクライナ人が複雑な経路で入国したことを認識し、必要な場合は権限を共有し管轄を移すことに同意している。問題は管轄の移動だ。これまで税関・国境取締局としか接してこなかった数万の難民を、どうやって市民権・移民局のシステムに移すのか。
「DHSが問題に気付いていなかったわけではない」と、支援団体ウクライナ移民タスクフォースのエグゼクティブ・ディレクター、アン・スミスは言う。「数の多さを実感していなかったのだ」
支援に当たる弁護士は政府機関の職員が既存の枠組みの中でしか動けないことを承知しつつ、タイムリミットが迫っていると訴える。
メラニー・ザメンホフは、コネティカット州にある非営利団体グリニッチ・ユダヤ人家族サービスの法務ディレクター。3月に入っても「政府が何の手も打っていないことに、ただただ愕然とした。臨時許可の滞在期限は翌月には切れるのに」と、彼女は振り返る。
数日後DHSは臨時許可の入国者もU4Uと同等に扱うと発表したが、ザメンホフは既に動きだしていた。当事者を税関・国境取締局に連れて行き、それで駄目なら市民権・移民局で滞在延長を願い出た。延長が却下されれば亡命を申請するつもりだが、戦争は亡命の理由にならないのでこれは難しいかもしれない。