アメリカに避難した27万人のウクライナ難民に迫る、タイムリミット
AN IMMIGRATION LIMBO
滞在期限の延長には希望が
通常、臨時許可は毎年審査され、1年単位で延長される。戦争に終結の兆しは見えず、ウクライナ難民の不安定な立場は移民政策の大幅な見直しを提起している。
「彼らの滞在を認めるのは、祖国と民主主義を守ろうとしているウクライナの人々に対する支援の要だ」と、民主党のセス・モールトン下院議員は言う。
「ウクライナは1年以上たった今も抗戦しているが、これは専門家にも想定外だった。祖国の文化と精神を守り、再建の可能性を保つためにアメリカに庇護を求めた人々を、われわれは守らなければならない。議会の立場からすると、難民のステータスを調整したり永続的な滞在に道筋を開いたりするには支援が必要だ」
だがウクライナ移民タスクフォースのユブギニア・ソロキナ法律顧問は、場当たり的な法案で移民制度を細かく改正しても「らちが明かない」と嘆く。「そんなことはばかげているし、非人道的だが、この国の法律はそういう構造になっている」
今年3月13日にDHSが対応策を打ち出すまで、バイデン政権は臨時許可による入国者の一部をTPSで救済しようとしていた。TPSを申請すれば、滞在期間は6カ月延長される。
とはいえ全員に申請資格があるわけではない。さらに臨時許可の期限がTPSより延びた今、もともとTPSで入国した人々の処遇は期限の切れる10月以降どうするのかという問題も浮上している。
昨年下院移民・市民権小委員会の委員長を務めた民主党のゾーイ・ロフグレン下院議員はジョー・バイデン大統領がウクライナに強い連帯を表明していることから、TPSの期限延長は「困難な闘いにはならない」との見方を本誌に示した。
人々はアメリカでの生活に慣れてきたところだ。ナタリアは4カ月かかって就労許可を取得した。マリアの娘は英語が不慣れで7年生をやり直したが、やっと友達との交流を楽しめるようになった。最近彼女は学校から帰るなり、アメリカの大学に行きたいと打ち明けたという。
「娘の夢や希望に耳を傾けるのはつらい」と、マリアは言う。
「夢はかなえてやりたいが、1カ月後にはかなう見込みがなくなるかもしれないのだから。どこに私たちの未来があるのか分からないのに、娘が未来を語るのをどうして平気で聞ける?」