元ポルノ女優への「口止め料」については完全に開き直るトランプ...「選挙法違反」にできるのか?
Not a Slam Dunk Case
トランプは出廷後にフロリダ州の私邸に戻って演説し、無罪を主張。民主党や検察を激しく非難した(4月4日) MARCO BELLOーREUTERS
<「不倫口止め料」をめぐって厳しい立証が始まったが、34件の罪状では複雑かつ難解な戦いに...重罪、それとも軽犯罪か?>
刑事事件で起訴されたドナルド・トランプ前米大統領が4月4日、ニューヨークの裁判所に出頭して罪状認否に臨んだ。
このとき初めて公開された起訴内容は、34件の「第1級事業記録改ざん罪」で、ニューヨーク州法では重罪に相当する。トランプは無罪を主張した。
ニューヨーク州マンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事の起訴状によれば34件はいずれも、トランプが2016年の大統領選の直前に、不倫関係にあった元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズに対して「口止め料」を支払った件に関係している。
「詐取の意図」による事業記録の改ざんだけなら、ニューヨーク州法では軽犯罪にしかならない。しかし「他の犯罪を行う意図、またはその遂行を幇助し、または隠蔽する意図」を伴うと「E級」の重罪と見なされ、禁錮1~4年に処せられる(E級は重罪のうちで最も軽い)。
つまりブラッグは、トランプが口止め料の支払いを違法に隠蔽しただけではなく、さらに第2の犯罪を行う意図があったことを証明しなくてはならない。その犯罪とは、起訴状が明らかにしているように選挙法違反だ。
ブラッグは、トランプが不倫を有権者に知られることで大統領選に影響が出ないよう、この計画を考案したと主張している。
ブラッグがどのように点と点を結んで重罪を立証するつもりかは、明らかにされていない。しかし彼は口止め料の支払いを、選挙で不利になり得る報道を阻止しようとしたトランプの広範な計画の一部だと主張するとみられる。
重罪の評決を勝ち取るためにブラッグは、マンハッタン地区の陪審員全員に対して、合理的な疑いを超えて前大統領の起訴内容を納得させなくてはならない。判事が法的な不備を理由に裁判を却下する事態も避ける必要がある。
今回の起訴内容は、大筋では予想されたとおり。焦点となっているのは、ダニエルズとの不倫関係が明るみに出ないよう、16年10月にトランプが下した決断だ。