「どこから来たかが問題となるべきではない。どこに行きたいかが重要だ」元シリア難民が29歳でドイツ地方自治体のトップに
2015年シリアを脱出しドイツに移民したライアン・アルシェブルが地方自治体の長になった REUTERS/Lukas Barth
<2015年シリアからドイツにやって来た現在29歳の青年がドイツ南部の人口2500人の小さな地方自治体(ゲマインデ)の長に選出された>
2015年の欧州難民危機の際、シリアからドイツにやって来た現在29歳の青年が4月2日、同国南部バーデン=ヴュルテンベルク州の人口2500人の小さな地方自治体(ゲマインデ)の長に選出された。保守的といわれる南部での快挙に世界的な注目が集まっている。
兵役を逃れてドイツに
本人ホームページによると、ライアン・アルシェブル(Ryyan Alshebl)は2015年、他の何百万人と同様、兵役を逃れるためにシリアから脱出した。当時ドイツに亡命したのは約90万人。ボートで地中海を渡り、最終的にアルシェブルはドイツ南部のバーデン=ヴュルテンベルク州(州都シュトゥットガルト)に到着。故国では大学でファイナンスを学ぶ学生だったが、その道が断たれたこと、またドイツ到着後に非常な孤独感に苛まれたことから、すぐに自分の将来を立て直すことに集中したという。短期間でドイツ語を習得し、事務アシスタントとしてのトレーニングを開始、その後7 年間、同州カルヴ地区の自治体アルテングシュテット庁舎で働いた。
アルテングシュテットの自治体では行政書記官として二重の訓練を受けることが可能で、そこで政治と法に対するアルシェブルの情熱が満たされた。最終学年で上位 5% に入っていたので、州は英才教育プログラムの一環としてアルシェブルに奨学金を提供。アルシェブルの才能と政治への情熱を見抜いた上司が、同州オステルスハイム自治体長に立候補するよう説得した。 アルシェブルは緑の党のメンバーであるが、今回は無党派の候補者として選挙に出馬している。
16歳が初めて選挙に参加
第一回選挙で 68.39%という高い投票率のうち55.41%を獲得し、他の2人の候補者を抑えて圧倒的勝利で長に選ばれた。今回のオステルスハイムの選挙では、16歳が初めて投票に参加できるようになった。緑の党元党首で、ショルツ政権で初のトルコ系連邦議会員・閣僚となったジェム・オズミデル食料・農業大臣は「今日、オステルスハイムはドイツ全土に寛容と国際主義のシグナルを送った」と祝辞を述べ、バーデン=ヴュルテンベルクの地方紙も「20年前には考えられなかった」と報じている。
移民に関するリサーチグループ、メディエンディーンスト・インテグレーションによると、ドイツ全人口の27%が国外にルーツを持っているにもかかわらず、自治体長に限るとその割合は1.2%に過ぎない(2022年5月)。先月、絶対過半数となる候補者がなかったため決選投票によりフランクフルト市長に選ばれたSPD(ドイツ社会民主党)のマイク・ジョセフも生まれはシリアだが、80年代からドイツで暮らしている。
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