最新記事
事件

ロシア、軍事ブロガー暗殺で26歳の女逮捕「ウクライナが組織的に犯行」

2023年4月4日(火)10時46分
ロイター
ダルヤ・トレポバ容疑者

ロシア当局は3日、著名軍事ブロガーを爆死させた容疑で女を逮捕したと発表した。逮捕されたのはダルヤ・トレポバ容疑者、ロシア当局公表のビデオより。(2023年 ロイター)

ロシア当局は3日、前日にロシア第2の都市サンクトペテルブルクのカフェで起きた爆発で「ウラドレン・タタルスキー」のペンネームで活動していた軍事ブロガーのマクシム・フォミン氏が死亡した事件で、26歳の女を逮捕したと発表した。

逮捕されたのはダリア・トレポワ容疑者。裁判所の記録によると、トレポワ容疑者はロシアがウクライナに対する全面侵攻を開始した昨年2月24日に戦争に反対する抗議活動に参加したとして身柄を拘束されていた。

フォミン氏はロシアによるウクライナ侵攻を支持すると同時に、ロシアが「特別軍事作戦」と呼ぶ侵攻の遂行方法を超国家主義者的な立場から批判することもあり、通信アプリ「テレグラム」で50万人を超えるフォロワーがいた。

ロシアはウクライナが組織的にフォミン氏を殺害したと非難。これに対しウクライナのポドリャク大統領府顧問は、フォミン氏の殺害はロシア「内部の政治抗争」の一部との見方を示した。ただこの主張を裏付ける証拠は示さなかった。

トレポワ容疑者は2日にカフェで開かれたロシアのウクライナ戦争の支持者を集めたイベントでフォミン氏に近づき、爆発物を仕掛けた贈り物をしたと伝えられている。

映像にはフォミン氏が贈られた小さな像を聴衆に披露しているようすが映っているほか、地元メディア「フォンタンカ」公表した映像には、爆発の瞬間に建物の1階が全体が揺れ、衝撃で外のテラスの一部が倒壊するようすが映っている。

ロシア内務省が公表したビデオで、トレポワ容疑者はフォミン氏を象った小さな像に爆発物を仕込み、これを会場に持ち込んだとし、この爆発物でフォミン氏が死亡したと告白。ただ国内メディア報道によると、同容疑者は捜査当局に対し、自分は謀略に陥れられたのであり、爆弾を持っていることは知らなかったとして容疑を否認している。

ロシア大統領府(クレムリン)はフォミン氏殺害を「テロ行為」として非難。ペスコフ報道官はこれについて大がかりな捜査を行っているとした。

ロシア国家対テロ委員会(NAC)は、ウクライナの情報機関がロシアで収監中の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の支持者の協力を得て、今回の爆発を組織的に実行したとの見解を示した。

その背景には、同容疑者がナワリヌイ氏らが推進していた反政府活動に参加登録していたという事実があるとみられる。

現場となったカフェの外では、吹雪の中、花を手向ける大勢の人の姿が見られた。その多くが動揺や怒りを口にしていた。

一部コメンテーターは、ウクライナ戦争を巡る暴力がますますロシア国内に浸透していることを示していると述べた。

ロシアでは昨年夏、極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリア氏が自動車に仕掛けられた爆弾で死亡した。ロシアはウクライナが関与したと主張、ウクライナは否定している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

農業
日本の技術で世界の干ばつ解決へ...ナガセヴィータの研究者に聞く「糖」の意外な活用法
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナのNATO加盟、同盟国説得が必須=ゼレン

ワールド

インド中銀がインフレ警戒、物価高騰で需要減退と分析

ワールド

米国、鳥インフルで鶏卵価格高騰 過去最高を更新

ワールド

トランプ氏次男妻、上院議員への転身目指さず ルビオ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中