最新記事
ウクライナ情勢

劣化ウラン弾、正しいのはロシアかイギリスか

How Depleted Uranium Shells Will be Used by Ukraine Against Russia

2023年3月23日(木)18時09分
エリー・クック

英主力戦車「チャレンジャー2」の訓練を受けるウクライナ兵(2月22日)。併せて劣化ウラン弾が供与されるという Toby Melville-REUTERS

<プーチンは西側諸国が「核の材料」を使うなら対抗措置を取ると強く反発>

イギリスはウクライナに対して、ロシア軍の戦車と戦う上で「きわめて効果的」な劣化ウラン弾を提供することを決定した。

イギリスのアナベル・ゴールディ国防閣外相は3月20日、イギリスがウクライナに供与する主力戦車「チャレンジャー2」の弾薬の一部に、相手戦車の装甲を貫通する劣化ウラン弾が含まれると述べた。イギリスは1月に、ウクライナに対して「チャレンジャー2」14台を供与することを決定していた。

ゴールディは、劣化ウラン弾は「最新型の戦車や装甲車を撃破するのに非常に効果的」だと説明した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、これに強く反発。劣化ウラン弾には「核」の要素が含まれると非難し、ロシアとしては対応せざるを得ないと警告した。ウクライナでの戦争が始まって以降、ロシア政府は繰り返し、核の使用をほのめかしている。

プーチンは中国の習近平国家主席との会談の中で、「(劣化ウラン弾の供与が)実現すれば、西側諸国が集団的に核の材料の使用を開始したものとして、ロシアは対応をせざるを得ない」と述べた。

装甲貫通力が高く射程距離が長い

英国防省の報道官は、「イギリスはウクライナに主力戦車『チャレンジャー2』を供与すると共に、劣化ウランを含む装甲貫徹弾をはじめとする弾薬も提供する予定だ」と述べた。「これらの弾薬は、最新型の戦車や装甲車を撃破するのに非常に効果的だ」

イギリス軍は「何十年も前から装甲貫徹弾に劣化ウラン弾を使用して」おり、これは「標準的な成分」だと同報道官は説明した。

さらに報道官は、「ロシアはこのことを知っているのに、意図的に誤った情報を流している」と批判。調査により、劣化ウラン弾が環境や人体に及ぼすリスクは「低いとみられる」と説明した。

イギリス政府は以前から、劣化ウラン弾など「(イギリス)軍が迅速かつ安全に目標を達成するのに役立つ、合法的で効果的な武器の使用を認めないことは誤りだ」と述べていた。

劣化ウラン弾は密度が鉛の1.7倍で、命中時に装甲に食い込みながら先端が削られる性質を持つ。また射程距離が長いため、敵の砲弾が届かない距離から敵を撃破することができるという。

ロシア国営メディアによれば、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、劣化ウラン弾の使用が過去に「深刻な健康被害」をもたらしたと述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

欧州半導体業界、自動車向けレガシー半導体支援を要望

ワールド

焦点:ロシアの中距離弾道弾、西側に「ウクライナから

ワールド

豪BHP、チリの銅開発に110億ドル投資へ 供給不

ビジネス

インド競争委、米アップルの調査報告書留保要請を却下
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中