「南進」を始めた中国の隠せない野心──本格的な海外基地の展開をにらむ...長期戦略をひもとく
INTO THE SOUTH PACIFIC
また、あるインタビューでナラパトは、過去10年ほどの間に中国が他国も領有権を主張する南シナ海への軍事的プレゼンスを強化したと指摘。ゆっくりと時間をかけて少しずつ影響力を拡大するという「サラミ」戦術で、中国はこの地域の実質的な支配権を手にした。これは、ほかの国々から「通行証を与えられた」ようなもので、「そして今度は南太平洋へと下ってきたわけだ」と、ナラパトは本誌に語った。
中国とソロモン諸島の間の安全保障協定は公にはなっていない。だが昨年4月、中国政府の報道官は「2つの主権・独立国家間の通常の人的交流と協力」の協定だと述べてその存在を認めている。リークされた協定の草稿によれば、ソロモン諸島は中国軍に警察、武装警察、軍の部隊、海軍の船舶を送り込むよう「依頼」することができるという。そうなれば中国政府はソロモン諸島の機密情報にアクセスできるようになるし、人民解放軍は法的な免責特権を得ることになるだろう。
バヌアツは、中国と安全保障協定を結んだ事実はないとしている。だが中国外務省によれば、6月に王毅(ワン・イー)外相(当時)がバヌアツを訪問した際に両国は「相互の政治的信頼と戦略的協力を深めることで幅広い合意に至り」、技術、経済、海洋、医療などに関する協定が結ばれたという。
王は昨年、南太平洋島しょ国10カ国を訪問した(実際に足を運んだのは8カ国で、残り2カ国はオンラインでだが)。これも中国政府がこの地域を重視していることの表れだ。
米安全保障政策研究所のニューシャムに言わせれば、中国はこの地域に広く網をかけており、ビジネスとしての投資や融資を足掛かりにして安全保障協定を結んでいる。そして協定は将来的な軍事基地の確保につながるかもしれない。
「中国はさまざまな所に一度に種をまいて、うまくいきそうな場所を探す傾向がある。競馬に行って全部の馬に賭けるようなものだ」と彼は言う。「まず最初に商業的に進出し、そこから政治的な影響力を構築し、3つ目に来るのが軍事だ。(相手国に)うまく入り込むための手段として、『警察の』装備だとか訓練だとか、地元警官や場合によっては治安担当者向けの『中国国内での研修』を提供したりすることが多い」と彼は電子メールで述べた。
中国のステルスな動きに注意
中国国営新華社通信によれば、11月末に南太平洋島しょ国の6カ国の警察関係の高官がオンラインで、中国の大物政治家である王小洪(ワン・シャオホン)公安相と面談した。これも中国が南太平洋で影響力を強めているアピールだ。