「南進」を始めた中国の隠せない野心──本格的な海外基地の展開をにらむ...長期戦略をひもとく
INTO THE SOUTH PACIFIC
このイベントは「中国と一部の南太平洋島しょ国との公務執行能力と警務間協力についての初の閣僚級対話」で、王とソロモン諸島の警察担当大臣が共同で主宰した。写真によれば、参加したのはフィジー、バヌアツ、キリバス、トンガ、パプアニューギニアの高官たちだ。中国は「地域の経済的・社会的発展を力を合わせて守るために、より効果的な協力の方法で、よりプロフェッショナルな警察能力を増強する」ことを期待していると新華社は伝えた。
もっともバヌアツは、全てを中国に賭けるつもりはないようだ。オーストラリアのメディアはカルサカウ首相が、オーストラリアとの安全保障協定は、両国関係を「体現」したものだと述べたと伝えた。
だがナラパトは、そうした表向きの合意と、誰が実際に状況を動かしているかとは必ずしも一致しない可能性があると言う。中国の活動は「決定的な重要性を持つものではなかったり」、人目に付かないよう進められるため、西側の人々はその全体像をつかみ損ねがちだというのだ。
オーストラリアの研究者ジェフ・ウェードによれば、中国はバヌアツで、時間をかけて中央統一戦線工作部(対外宣伝活動を担う中国共産党内の組織)の息のかかった組織のネットワークを構築してきた。これは中国当局による外国での警察活動になり得るし、ピーター・マティスとマシュー・ブラジルの著書によればスパイ活動の拠点としても機能する可能性がある。
11月に首相に選ばれる前、カルサカウは中国政府の動きに懸念を表明していた。その1つがエスピリトゥサント島の港湾開発のための1億1400万ドルの借款だと、シドニー・モーニング・ヘラルドは伝えている。
カルサカウによれば、議会は借款の合意文書を見ることもできず、バヌアツがデフォルトに陥った場合に中国政府に港の占有を認める条件が含まれているかどうかの確認もできないという。カルサカウに言わせればこれは「異例のこと」で、シャーロット・サルワイ前首相の対中姿勢を批判した。「中国がこれ(合意)から何を手にすることになるのか、誰も疑義を挟めない」と彼は言った。
12月21日、李大使は9日間で実に4回目となる大盤振る舞いの約束をした。今度は医療機器の寄付という形で、中国からバヌアツへの支援をさらに印象付けたのだ。大使館によれば、「(両国関係は)史上最も良好だ」と、李は述べたとか。
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