最新記事
ウクライナ情勢

バフムトの激戦をよそに歪み合う「反プーチン」の2人

Infighting among Putin allies reaches fever pitch

2023年3月7日(火)19時19分
ブレンダン・コール

ワグネルを率いてバフムトを攻め落とそうとするプリゴジンだが Press service of "Concord"/REUTERS

<バフムトでの苦戦から、責任のなすり合いが激化。ウクライナ軍は撤退するのかしないのか>

民間軍事会社ワグネル・グループの創設者で資本家のエフゲニー・プリゴジンと、軍事ブロガーのイーゴリ・ギルキン。ロシアの大物戦争屋2人の「舌戦」が激しさを増している。

ギルキンはロシア連邦保安庁(FSB)の元大佐で、2014年にウクライナ東部ドンバスでの紛争で、親ロ派分離主義勢力を指揮した人物。ギルギン(別名「イーゴリ・ストレルコフ」)は3月5日、ロシア軍がウクライナ東部の激戦地バフムトを何ヵ月も制圧できないのは、ワグネルを指揮するプリゴジンの責任だと主張した。

ギルキンはメッセージアプリ「テレグラム」への投稿で、プリゴジンの政治的野心や行動は、彼の「反社会的」人格によるものだと指摘。「ウクライナに勝利するという共通の大義」にとって有害だと非難した。

さらに彼は、セルゲイ・ショイグ国防相を更迭すべきだと訴え、ロシア軍とワグネルの部隊を前線から撤退させて、人員の補充と再編を行うべきだと主張した。

テレグラム上でギルキンの批判について問われたプリゴジンは6日、「あの男については議論する気もしない」と答えた。

弾薬が届かないのは「官僚主義か、裏切りか」

プリゴジンはまた、ギルキンは過去に、ワグネルの一員として前線に行き、戦争でもっと直接的な役割を果たさないかという誘いを受けたものの、「何もせず文句を言う」ことを選んだと主張した。

「なぜ私が、あんな女々しい奴についてコメントしなければならないのか」とプリゴジンは言った。

プリゴジンはさらに、ワグネルの部隊に約束された弾薬がまだ届いていないと述べた。

プリゴジンは2月、自分がずっと以前から要求していた弾薬の提供があったとして、ロシア国防省に圧力をかけてくれたロシア国民に感謝を述べていた。

だが6日の投稿では、2月23日に発注した弾薬の大半が発送されていないと言い、その理由は「よくある官僚主義か、それとも裏切りか」はっきり分かっていないとつけ加えた。

ワグネルの戦闘員は、何カ月も続いているバフムトでの戦いに重点的に配備されている。プリゴジンはロシア軍がバフムトを包囲したと主張したが、ウクライナ政府はこれを否定している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中