誰もプーチンを擁護しないが、欧米諸国も支持しない──グローバルサウスが冷ややかに見て取る「偽善」と2つの溝
Two Splits on Ukraine
次期米大統領選にも影響
表向きの楽観論と、非公式な場で聞かれる現実主義的な見解のギャップは、なんら驚くべきことではない。
戦争中の国のリーダーは明るい展望を力強く語り、国民の士気と同盟国の結束を維持する必要がある。また、自分たちは勝利できると自信を示し、何が何でも戦い抜くと断言することで、敵に目標の下方修正を強いる必要もある。たとえ交渉に応じるべき時だと思っても、それを口にすれば、交渉における自らの立場が弱くなり、希望以下の結果を招くことになる。
筆者が心配なのはこの点だ。バイデン政権のウクライナを支持する言葉は、どんどん壮大なものになっており、ハリウッド映画的なハッピーエンドを約束するようになった。
バイデンのウクライナ訪問は、彼のバイタリティーと、ウクライナを支持する決意をアピールする大胆な行動だった。だがそれは内容的にも、視覚的にも、バイデンの政治生命をこの戦争の結果に直接結び付けることになった。
もし、バイデンが約束を実現できなければ、今は説得力があるように見えるアメリカのリーダーシップが、来年には輝きを失っているだろう。
ロシアの侵攻から2年目となる2024年2月にも、戦況が膠着状態にあり、ウクライナが破壊され続けていたら、バイデンは支援を一段と強化するか、次善の策を探すプレッシャーにさらされる。これまでの壮大な約束を考えると、完全な勝利以外のものは失敗に見えてしまうだろう。
さらに、中国がロシアへの支援強化を決めたら、バイデンは世界第2位の経済大国に追加制裁を科さなければならない。それは新たなサプライチェーン問題を引き起こし、現在進んでいる経済の立て直しが危うくなる。
そうなれば、24年の米大統領選で、共和党大統領候補の座を狙う面々(そのうちの1人は特に)は、舌なめずりして喜ぶに違いない。