最新記事
ウクライナ支援

F16供与への布石?ウクライナ軍パイロットがアメリカで戦闘機の訓練開始

Ukrainian Pilots Are in U.S. Training on F-16s

2023年3月6日(月)18時03分
エリー・クック

ついにF16をウクライナに供与するための準備か? Sputnik/Sergey Bobylev/REUTERS

<何のための訓練なのかは明らかに見えるが、米当局者はF16供与のための準備ではないと否定する>

複数のメディアによれば、ウクライナ軍のパイロットがアメリカ国内で、F16戦闘機の訓練に入った。正確には、どの程度の訓練が必要かの評価を受けている。

NBCニュースは4日、選抜された2人のウクライナ軍兵士はアリゾナ州で、F16戦闘機を含む航空機の訓練を完了するためにどのくらいの時間がかかるか調べるための「評価を受けている」と伝えた。

またNBCは関係者の話として、参加するウクライナのパイロットの数は今後さらに増える可能性があると伝えている。

いくつかの報道によれば、ウクライナ人パイロットは英語に堪能であることも条件に選ばれており、あと10人ほどがアメリカに派遣される予定だという。

CNNも、ウクライナ軍のパイロットが「ウクライナとアメリカの通常の軍事対話の一環」としてアリゾナに来ていると伝えた。

アリゾナ州でのこの「習熟イベント」とは、「空軍兵士同士のディスカッションと、米空軍の運用についての見学」だと関係者は控えめに述べたという。

この関係者はまた、このイベントの目的はウクライナ軍のパイロットの実戦能力引き上げに力を貸すとともに、「能力を開発する方法についてアドバイス」することにあると述べた。NBCによれば、シミュレーターを使った訓練も行われている。

だが一方でこの関係者は「ウクライナへのF16の供与に関し発表できるような新しい情報はない」と述べている。

「自由の翼」を求めるゼレンスキー

ウクライナ政府は以前から西側諸国に対し、先進的な戦闘機の供与を求めてきた。ウクライナ空軍には旧ソ連時代の古い軍用機しかないためだが、ウクライナへの支援を行っている国々も、ロシア領土への攻撃を可能にする戦闘機や長距離ミサイルの支援にはこれまで応じてこなかった。

ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は2月にイギリスとフランス、ベルギーを歴訪した際、戦闘機は「自由の翼」だとして改めて供与を求めた。

ゼレンスキーのロンドン訪問中、イギリス政府はウクライナ軍兵士(戦闘機のパイロットを含む)を対象とした訓練を今後拡大すると発表した。

これは「パイロットが先進的なNATO標準の戦闘機を将来的に確実に飛ばすことができるようにするため」だと、英首相官邸は2月8日、明らかにした。

イギリスがウクライナ兵向けの訓練開始の予定を公式に明らかにしたことで、「もっと前に始めるべきだった」アメリカの行動の「遅れ」が目立つ形になってしまったと、ワシントンに本拠を置くシンクタンクのジェームズタウン財団のグレン・ハワード会長は述べた。

ウクライナのパイロットたちは「F16を飛ばしたいという燃えるような欲求を抱えている」とハワードは本誌に語った。つまり、パイロットたちはF16について間違いなく何かを掴んで帰るだろうということだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ関税でナイキなどスポーツ用品会社

ビジネス

中国自動車ショー、開催権巡り政府スポンサー対立 出

ビジネス

午後3時のドルは149円後半へ小幅高、米相互関税警

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中