ロシア、中国、イラン...完璧なはずの独裁政権が、無視できなくなった「革命」の可能性
UNSAFE DICTATORSHIPS?
ロックダウンの緩和を受けて新型コロナの新たな感染流行が起きたことで、習の基盤がさらに弱くなる可能性もある。「何百万人もの死者が出れば、政治的混乱が生じかねない。共産党内部のエリートの中で、習が脇に追いやられることになるかもしれない」と、ウォレスは言う。
習は外交政策も一部軟化させ始めており、一部の問題についてだが米政府との関係改善も試みている。
これはロシアとの同盟強化を回避したいとか、経済低迷のなかで貿易戦争を終わらせたいといった実利的な理由に駆られてのことだ。しかし一連の動きは、習の基盤がぐらついていることや再び党指導部内で対立が生まれつつあることを示している。
これが共産党支配の崩壊につながると考えるのはあまりにとっぴだが、どの派閥が台頭するかによって習の抑圧的な支配が緩む可能性はある。
ここで取り上げた3つの国のうち、本物の変革が起こる可能性が最も高いのはイランかもしれない。まず都市部の住民の過半数が変革を望んでいる。政府内部に明らかな分裂も見られる。12月には悪名高い「道徳警察」の廃止を司法長官が発表したが、道徳警察の管轄は内務省だから、この声明には何の意味もなかった。
ヒジャブをめぐる争いには重要な意味がある。米コンサルティング会社のユーラシア・グループは昨年12月の報告書で、「ヒジャブの規定は今もイランの根本原則」だと指摘。ヒジャブ着用についてより柔軟なアプローチを取ることは「イラン政府が短期的に抗議運動を封じ込めるのには役立つかもしれないが、国民の不満への本当の対応にはならない。23年も散発的な抗議デモが続く可能性は高い」と書いた。
デモより怖い軍事クーデター
だがユーラシア・グループは別の報告書で、イランの「政権崩壊が今後6カ月以内に起きる可能性は低い」と分析。政権崩壊が実現するとしても、その要因は国民の抗議ではなく、精鋭部隊であるイラン革命防衛隊によるクーデターのほうが「可能性が断然高い」と指摘した。
民衆蜂起は軍事クーデターにつながることが少なくない。エジプトでは、11年の大規模な民衆蜂起が原因でホスニ・ムバラクが大統領の座を追われた。次のムハンマド・モルシ大統領に対しても辞任を求めるデモが起きた後、権力を引き継いだのは、ITに強く英語が堪能な西側受けのいい若い指導者ではなく、エジプト軍だった。
「アラブの春」の際に民衆蜂起が起きた他の多くの国でも、最終的に統治を担ったのは軍だった。