最新記事

国家首脳

ロシア、中国、イラン...完璧なはずの独裁政権が、無視できなくなった「革命」の可能性

UNSAFE DICTATORSHIPS?

2023年2月16日(木)19時16分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

ロックダウンの緩和を受けて新型コロナの新たな感染流行が起きたことで、習の基盤がさらに弱くなる可能性もある。「何百万人もの死者が出れば、政治的混乱が生じかねない。共産党内部のエリートの中で、習が脇に追いやられることになるかもしれない」と、ウォレスは言う。

習は外交政策も一部軟化させ始めており、一部の問題についてだが米政府との関係改善も試みている。

これはロシアとの同盟強化を回避したいとか、経済低迷のなかで貿易戦争を終わらせたいといった実利的な理由に駆られてのことだ。しかし一連の動きは、習の基盤がぐらついていることや再び党指導部内で対立が生まれつつあることを示している。

これが共産党支配の崩壊につながると考えるのはあまりにとっぴだが、どの派閥が台頭するかによって習の抑圧的な支配が緩む可能性はある。

ここで取り上げた3つの国のうち、本物の変革が起こる可能性が最も高いのはイランかもしれない。まず都市部の住民の過半数が変革を望んでいる。政府内部に明らかな分裂も見られる。12月には悪名高い「道徳警察」の廃止を司法長官が発表したが、道徳警察の管轄は内務省だから、この声明には何の意味もなかった。

ヒジャブをめぐる争いには重要な意味がある。米コンサルティング会社のユーラシア・グループは昨年12月の報告書で、「ヒジャブの規定は今もイランの根本原則」だと指摘。ヒジャブ着用についてより柔軟なアプローチを取ることは「イラン政府が短期的に抗議運動を封じ込めるのには役立つかもしれないが、国民の不満への本当の対応にはならない。23年も散発的な抗議デモが続く可能性は高い」と書いた。

デモより怖い軍事クーデター

だがユーラシア・グループは別の報告書で、イランの「政権崩壊が今後6カ月以内に起きる可能性は低い」と分析。政権崩壊が実現するとしても、その要因は国民の抗議ではなく、精鋭部隊であるイラン革命防衛隊によるクーデターのほうが「可能性が断然高い」と指摘した。

民衆蜂起は軍事クーデターにつながることが少なくない。エジプトでは、11年の大規模な民衆蜂起が原因でホスニ・ムバラクが大統領の座を追われた。次のムハンマド・モルシ大統領に対しても辞任を求めるデモが起きた後、権力を引き継いだのは、ITに強く英語が堪能な西側受けのいい若い指導者ではなく、エジプト軍だった。

「アラブの春」の際に民衆蜂起が起きた他の多くの国でも、最終的に統治を担ったのは軍だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中