最新記事

米政治

「習近平と立場を交換したい指導者などいない」中国をスルーした一般教書演説

What’s At Home Counts

2023年2月13日(月)16時15分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

さらにバイデンは、半導体への巨額の投資を含む「CHIPSおよび科学法」を昨夏、超党派で成立させたとアピール。製造業の復活のために必要な保護主義政策を打ち出した結果、既に80万件の製造業での雇用を「この法律の力を借りるまでもなく」生んだと繰り返し主張した。

「アメリカのサプライチェーンが必ずアメリカから始まるよう、私たちは尽力している」

この言葉に、議場は党派を超えて拍手を送った。バイデンは、連邦政府のインフラ事業に使用する建設資材を全て国産にする考えを示した。

一方で、一部の共和党議員はメディケア(高齢者医療保険制度)などの高齢者向け事業を削減しようとしているとバイデンは主張。共和党議員が「そんなことはない!」とヤジを飛ばすと、「おやおや、転向したようだね」とジョークで切り返す場面もあった。

演説直後に行われたCNNの世論調査は、国内での実績に的を絞って演説したバイデンの狙いどおりと思われる結果だった。

無党派層でバイデンの経済政策を支持すると答えた割合は、38%から64%に急上昇。バイデンは今後数週間以内に、大統領選への出馬を宣言するとみられる。

しかし共和党から指導者として不適任だと批判されているバイデンは、これからの2年間、国外ではタカ派を演じるしかないだろう。中国との協調路線を取るという期待に応じることもないはずだ。

気球問題が持ち上がった後、アントニー・ブリンケン米国務長官は、初の訪中予定を延期した。

「米中関係にとって、気球問題は年内は尾を引く。それはアメリカが中国への強硬姿勢を強めている表れでもある」と、シンガポールの南洋理工大学国際研究大学院のラファエロ・パンツッチ上級研究員は指摘する。

「コロナ禍を脱却して世の中が正常化するにつれて、中国がこれまで以上に野心的に国外に進出するようになり、米中間の競争は今年ますます激化する」

バイデン政権はこの2年間、中国に対しては同じ姿勢を取り続けてきた。関係が改善されることがあるとすれば、それは「中国の出方次第」という方針だ。

共和党は中国気球の撃墜を受けて、いったんはバイデンへの矛を収めた。だがトランプ政権時代に国連大使を務め、共和党の次期大統領候補の1人と目されるニッキー・ヘイリーがツイートしたように、「バイデンのせいで、アメリカが中国からいいようにあしらわれている」ような事態があれば、いつでも攻撃材料にしようと狙っている。

とはいえ一般教書演説が明示したのは、バイデンが出馬した場合、勝敗の決め手は内政だということだ。それは、彼自身がよく分かっている。

From Foreign Policy Magazine

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中