少女は赤ん坊を背負いながらコバルトを掘る──クリーンエネルギーの不都合な真実
CLEAN ENERGY’S DIRTY SECRET
フォースタンは許可手続きについて、費用がかかりすぎるということ以外の詳しいことは知らなかった。「鉱石運搬に必要な許可は3種類ある。費用は運べる鉱石の量と運ぶ距離によって異なる」と、フィリップが補足してくれた。
鉱石の運搬許可の問題は、政府によるピンハネというだけにとどまらない。このせいで手掘り採掘する人々の多くは、市場に直接アクセスできない。市場から切り離されたことで、彼らはあれだけの重労働にもかかわらず、相場より安い価格で鉱石を売ることを余儀なくされ、貧困の悪循環が起きている。
私はフォースタンたちに、健康状態について尋ねた。咳や頭痛が治らないと彼らはこぼした。切り傷やねんざ、腰や首の痛みにも悩まされていた。手掘り採掘を日々行う生活が望ましいとは思っていないが、ほかに選択肢はないと考えている。
「要するに、ここに住んでいる大半の人間には、ほかに仕事がないんだ」と、フォースタンは言った。「でも、コバルトを掘って金を稼ぐことなら誰にでもできる」
フォースタンのグループがいくら稼ぐか計算してみた。彼らは8人で洗浄済みのヘテロゲン鉱を1日に平均して3袋分集める。1袋が平均40キロ弱。仲買人は1袋につき約2・8ドル払うから、1人当たりの1日の稼ぎは1ドルを少し超えるくらいだ。
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キプシ産のヘテロゲン鉱はコバルトの含有量1%以下で、10%を超えることもあるコルウェジ産よりかなり質が悪い。鉱石の質が悪いため、キプシで手掘り採掘をしても稼ぎは非常に少ない。
フォースタンの話を聞いた後、8歳のアンドレと10歳のキサンギに選鉱作業を見せてもらうことにした。2人の少年は自分よりも重そうな袋を引きずって坑口から出ると、近くの池に向かった。この地域で手掘りを行う数グループがこの池を選鉱に使っている。池の水は赤茶色に濁って泡立ち、悪臭を放っていた。
少年たちは池のそばで袋を傾け、素手で中身を取り出した。アンドレがはだしで池に入り、片側に取っ手が2つ付いた金属のふるいを持った。
キサンギがさびついた小さなショベルで袋から出した泥混じりの石をふるいに入れると、アンドレがふるいを水に浸けて猛烈な勢いで揺さぶりだした。痩せ細った小さな肩が今にも外れそうな勢いだ。