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犯罪

若者を闇バイトに引き寄せる「経済的困窮」

2023年2月8日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
ティーンエージャー

少年犯罪全体が減少するなかで詐欺などの知能犯は増えている Slonov/iStock.

<生活困窮が動機の少年による詐欺などの知能犯が近年、急増している>

最近、各地で押し入り強盗事件が続発し世間を脅かしている。SNS上の闇バイト募集で集められた素人集団による犯行だ。特殊詐偽よりも手早く稼げる強盗に手が出されるようになっている。

強盗とは「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取」することをいう(刑法236条)。ひったくりやスリは窃盗として処理されるが,暴行や脅迫を伴う強奪は凶悪犯の強盗となる。刑罰も懲役5年以上と重い。

強盗とは犯罪の古典タイプで、統計に記録された事件の数は社会の治安動向を測る指標となる。法務省の『犯罪白書』に、毎年の強盗事件の数(警察認知数)が出ている。これを人口当たりの数にして、過去から現在までの推移を描くと<図1>のようになる。

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グラフの始点の1950(昭和25)年では、年間に7821件の強盗事件が起きていた。当時の人口(8412万人)で割ると、10万人あたりの事件数は9.3件。観察期間の中で最も多く、戦後間もない混乱期であった当時の状況を反映している。

その後、高度経済成長により社会が安定化するにつれて強盗発生率は下がり、平成初頭の1989年には1.3件と最少となる。しかし平成不況の影響からか再び急増し、2003年にピークとなった後、現在まで低下傾向が続いている形だ。強盗発生率のカーブは失業率と似ているようにも見える。

直近の2021年の強盗事件数は1138件で、人口当たりの数も戦後初期の頃よりずっと少ない。だが、今後どうなるかは分からない。SNSにより犯行要員を募ることが容易になっていて、経済的に困窮した若者が釣られやすくなっている。いつの時代でも、強盗の動機として最も多いのは「生活困窮」だ。

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