最新記事

裁判

性的暴行犯、裁判で「性自認は女性」と訴え女子刑務所へ...批判受け、男子刑務所に移送

2023年2月3日(金)18時23分
クラリッサ・ガルシア
海外の刑務所イメージ画像

イメージ写真 brentmelissa-iStock

<女性として当初は女子刑務所に入れられた元男性だが、女性受刑者の安全を懸念する声が高まったことを受けて移送が決定>

イギリスのスコットランドで1月末、元男性のトランスジェンダーの女性が女子刑務所から男性専用の刑務所に移送されたことに注目が集まっている。イスラ・ブライソン(31)は、男性として女性2人に性的暴行を加えた罪で、1月24日に有罪評決を受けた。だが問題は、「彼」がその後にトランスジェンダーであることを訴え、性別を女性に変更すると決めたことだ。

■【写真】性自認が女性だと訴える現在のブライソンの姿と、男性だったころの姿

ブライソンは当初、スターリングにあるコーントンベール女子刑務所に送られたが、これを受けて活動家や政治家、さらには国連の当局者からも非難の声が上がった。ほかの女性受刑者の身に危険が及ぶ可能性があるというのだ。

英議会の議員たちの間でも、ブライソンを女子刑務所に収監するという考え方について議論が巻き起こった。

スコットランド選出の議員で英議会の人権合同委員会の委員長であるジョアンナ・チェリーは、タイムズ・ラジオの番組の中で、「有罪評決を受けたこのレイプ犯人は、同情を集めて女子刑務所に入るために制度を悪用した――多くの人の目には、そう映るだろう」と述べ、さらにこう続けた。

「女子刑務所の受刑者たちは、とても弱い立場にある。彼女たちの多くは、自らも長年にわたって虐待を受け、その傷に苦しんできた。有罪評決を受けたレイプ犯と同じ場所で過ごすことになる女性受刑者たちの安全が、とても心配だ」

自治政府首相が異例の説明

こうした動きを受けて、スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は、ブライソンが女子刑務所に服役することを認めないと発表した。スコットランド議会は2022年12月に、法律上の性別の変更手続きを簡易化する法案を可決している。しかしスタージョンは、この変更はブライソンのケースには影響しないと述べた。

スタージョンはスコットランド議会の首相質問の中で、女子刑務所にレイプ犯を入れることは不可能だという考え方を支持すると述べた。

「どの受刑者についても、その人物がどこに収監されるかについての詳細を私が明かすのは適切ではない。しかしこのケースについては、一般市民や議会の中から懸念の声が上がっていることを踏まえて、議会に対して、問題の受刑者がコーントンベール女子刑務所に収監されることにはならないと確認できる。これで市民が安心できることを願っている」と彼女は述べた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中