裁判所まである!中国の非合法「海外警察署」の実態を暴く
XI’S POLICE STATE–IN THE U.S.
とはいえ、アメリカ在住の中国系移民約500万人の多くは、どの移住者団体にも属しておらず、その行動を必ずしも支持していない。全ての同郷会が党の中央統一戦線工作部とつながっているわけでもない。
だが共産党にとっての統一戦線の重要性は、11月に習の右腕である丁薛祥(ティン・シュエシアン)が「国内外の中国の息子や娘」は「統一戦線」に参加し、党が「敵を克服し」「国を治める」ことに協力するよう呼びかけたことからも明らかだ。
表向き、同郷会はビジネスチャンスを提供したり、旧正月にお祝いをしたりする地域団体にすぎない。しかし、中央政府の公安省や地方の公安庁を通じて統一戦線工作部と密接に連携しているのは明白な事実だ。
本誌が中国側の公式発表や報道を調べた限りでも、アメリカその他の国から中国に出張し、その業務について協議したり、時には国外での功績に対して報酬を受け取ったりする同郷会幹部らの姿がうかがわれる。
共産党との密接なつながりが疑われる人物としては、例えばニューヨーク在住でホテル経営者の安全忠(アン・チュアンチョン)がいる。
彼は昨年10月、中国人の帰国を強要する計画を立てたとして起訴されている。安はニューヨークの山東同郷会の前会長で、現在は名誉会長だ。
「代理法廷」も9カ所に
人権団体セーフガード・ディフェンダーズが昨年9月に発表した「中国の在外警察の暴走」と題する報告書は、中国がニューヨークを含む数十カ所に非合法の「警察署」を設置している事実を暴き、世界中に衝撃を与えた。
しかし本誌は、同様ないし類似の役割を果たす代理法廷のような施設がニューヨークに6カ所、ロサンゼルスに2カ所、サンフランシスコに1カ所あることを確認した。いずれも、中国の警察や裁判所の報告書、国営メディアや華僑系メディアによる記述、裁判所のウェブサイトを徹底的に検索して特定したものだ。
そうした施設は戸籍や運転免許証などの書類の更新や、中国の病院との遠距離健康診断などのサービスを提供していると自称している。
またニューヨーク温州商工会議所のように、「行方不明」になっている人を捜し出し、裁判に必要な書類を提出することもあるという。
米国務省も、中国が主権の及ばぬ外国で事実上の警察活動をしているという報道は承知している。
ある報道官は匿名を条件に、「事態を深刻に受け止めており、国境を越えた中国政府の弾圧には引き続き注意を払っていく。この問題については同盟諸国やパートナーとも調整している」と述べた。