中国Z世代に広がる「寝そべり族」とは? ポストコロナにらむ習近平政権に難題
2022年11月、新疆ウイグル自治区のウルムチで発生した火災を受け新型コロナウイルス対策関連の規制に抗議するため集まった人々。北京で撮影(2023年 ロイター/Thomas Peter)
中国で新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策が解除されてから迎えた最初の週末。上海のある小さなライブハウスで開催されたヘビーメタルバンドのコンサートでは、薄暗い中で数十人に上る観客の若者がひしめき合い、汗や強い酒のにおいが漂っていた。
これこそが、昨年11月終盤に中国全土へと波及したゼロコロナに対する抗議行動で若者たちが求めていた自由の一端だ。抗議行動はまたたく間に拡大し、習近平国家主席が権力を掌握して以降、10年間で国民の怒りが最も大規模に表面化する事態になった。
中国で1995年から2010年までに生まれた2億8000万人の「Z世代」は、3年にわたるロックダウン(都市封鎖)や検査、経済的苦境、孤立といった試練を経て、新しい政治的な意見の表明方法を発見し、共産党のお先棒をかついでネットに愛国主義的な書き込みするか、そうでなければ政治的には無関心、という従来のレッテルを貼られることを否定しつつある。
一方、指導者として異例の3期目に入ったばかりの習氏は、過去最悪に近い失業率と約50年ぶりの低成長に直面するZ世代を安心させる必要があるものの、それは難しい課題となっている。
なぜなら、若者の生活水準を改善することと、これまで中国を発展させてきた輸出主導型の経済モデルを維持することは、社会の安定を最優先とする共産党と政府に対し、本来的な矛盾を突き付けるからだ。
各種調査によると、Z世代は中国におけるどの年齢層よりも将来に対して悲観的になっている。そして、何人かの専門家は、抗議行動を通じてゼロコロナの解除早期化に成功したとはいえ、若者が自分たちの生活水準改善を実現する上でのハードルは今後高くなっていく、と警告する。
精華大学元講師で今は独立系の評論家として活動しているウー・キアン氏は「若者がこれから進める道はどんどん狭く、険しくなっているので、彼らの将来への希望は消えてしまっている」と指摘。若者はもはや、中国の指導者に対する「盲目的な信頼と称賛の気持ち」を持ち合わせていないと付け加えた。
実際、ロイターの取材に応じた若者の間からは、不満の声が聞こえてくる。先の上海のコンサートにやってきたアレックスと名乗った26歳の女性は「もし指導部が(ゼロコロナ)政策を変更しなければ、より多くの人民が抗議に動いただろう。だから、結局は軌道修正するしかなかった。若者が中国で悪いことなど絶対に起きないという考えに戻ることはないと思う」と述べた。