最新記事

中国社会

中国Z世代に広がる「寝そべり族」とは? ポストコロナにらむ習近平政権に難題

2023年1月23日(月)10時42分

Z世代に広がる寝そべり族

特に都市部の若者が抗議活動の先頭に立つのは、世界的な傾向と言える。中国でも1989年の天安門事件につながった最大の民主化運動を指導したのは学生たちだ。

ただ、複数の専門家は、中国のZ世代が習氏にジレンマを与えるような特徴を備えていると分析する。

近年では、中国のソーシャルメディアを利用している若者が、ゼロコロナを含めた同国の政策に批判的な意見に激しくかみつく様子が国際社会の注目を集めてきた。

彼らは、愛国主義的なウェブサイトの背景色にちなんで「小粉紅(little pinks)」と呼ばれるようになり、中国政府が展開する「戦狼外交」や、毛沢東時代に文化大革命の推進役となった紅衛兵に比すべき存在とみなされている。

ところが、パンデミック発生以降、各種規制の下で経済が減速するとともに、そうした猛烈な姿勢のアンチテーゼ的な動きが出現した。ただし、それは西側諸国のようにナショナリズムの台頭に反対するリベラル派とは異なる。多くの中国の若者が選択しているのは「躺平(何もしないで寝そべること)」で、「社畜」としてあくせく働くことを否定し、手に入る物で満足するという生き方だ。

本当のところ、こうした生き方に傾いている若者が、どれくらい存在するのかを示すデータは見当たらない。しかし、ゼロコロナへの抗議の前に水面下で醸成されていた要素はただ1つ。つまり彼らが予想する経済的な将来に対する納得いかない気持ちだ。

コンサルティング会社のオリバー・ワイマンが昨年10月に実施し、12月に公表した中国の4000人を対象に行った調査に基づくと、Z世代はどの年齢層にも増して中国経済の先行きを悲観している。彼らの62%は雇用に不安を抱え、56%は生活が良くならないのではないかと考えている。

これに対して10月に公表されたマッキンゼーの調査を見ると、米国のZ世代は25歳―34歳を除く他のどの世代よりも、将来の経済的機会に明るい展望を持っていることが分かる。

中国でも習政権の始まりのころは、若者の見通しはもっと楽観的だった。

2015年のピュー・リサーチ・センターによる調査では、1980年代終盤に生まれた人の7割は経済環境に肯定的な見方をしており、96%が親世代よりも生活水準が上がったと回答していた。

中国の若者のトレンドを調査している企業の創設者、ザク・ディヒトワルド氏はZ世代について「学習による悲観論だ。これは彼らが目にしてきた事実や現実を根拠にしている」と解説。ゼロコロナに対する抗議は10年前なら起こらなかっただろうが、今の若者たちは上の世代が行使しなかった手法で、自らの声を届ける必要があると信じていると述べた。

ディヒトワルド氏は、近いうちにさらなる社会的騒乱が発生する公算は乏しいとしつつも、共産党は今年3月の全国人民代表大会(全人代)で若者に「何らかの希望と方向」を提示することを迫られていると主張。そうした解決策を打ち出せないと、長期的には抗議の動きが再び活発化する可能性があるとみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中