最新記事

中国社会

中国Z世代に広がる「寝そべり族」とは? ポストコロナにらむ習近平政権に難題

2023年1月23日(月)10時42分
北京で抗議デモをする人々

2022年11月、新疆ウイグル自治区のウルムチで発生した火災を受け新型コロナウイルス対策関連の規制に抗議するため集まった人々。北京で撮影(2023年 ロイター/Thomas Peter)

中国で新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策が解除されてから迎えた最初の週末。上海のある小さなライブハウスで開催されたヘビーメタルバンドのコンサートでは、薄暗い中で数十人に上る観客の若者がひしめき合い、汗や強い酒のにおいが漂っていた。

これこそが、昨年11月終盤に中国全土へと波及したゼロコロナに対する抗議行動で若者たちが求めていた自由の一端だ。抗議行動はまたたく間に拡大し、習近平国家主席が権力を掌握して以降、10年間で国民の怒りが最も大規模に表面化する事態になった。

中国で1995年から2010年までに生まれた2億8000万人の「Z世代」は、3年にわたるロックダウン(都市封鎖)や検査、経済的苦境、孤立といった試練を経て、新しい政治的な意見の表明方法を発見し、共産党のお先棒をかついでネットに愛国主義的な書き込みするか、そうでなければ政治的には無関心、という従来のレッテルを貼られることを否定しつつある。

一方、指導者として異例の3期目に入ったばかりの習氏は、過去最悪に近い失業率と約50年ぶりの低成長に直面するZ世代を安心させる必要があるものの、それは難しい課題となっている。

なぜなら、若者の生活水準を改善することと、これまで中国を発展させてきた輸出主導型の経済モデルを維持することは、社会の安定を最優先とする共産党と政府に対し、本来的な矛盾を突き付けるからだ。

各種調査によると、Z世代は中国におけるどの年齢層よりも将来に対して悲観的になっている。そして、何人かの専門家は、抗議行動を通じてゼロコロナの解除早期化に成功したとはいえ、若者が自分たちの生活水準改善を実現する上でのハードルは今後高くなっていく、と警告する。

精華大学元講師で今は独立系の評論家として活動しているウー・キアン氏は「若者がこれから進める道はどんどん狭く、険しくなっているので、彼らの将来への希望は消えてしまっている」と指摘。若者はもはや、中国の指導者に対する「盲目的な信頼と称賛の気持ち」を持ち合わせていないと付け加えた。

実際、ロイターの取材に応じた若者の間からは、不満の声が聞こえてくる。先の上海のコンサートにやってきたアレックスと名乗った26歳の女性は「もし指導部が(ゼロコロナ)政策を変更しなければ、より多くの人民が抗議に動いただろう。だから、結局は軌道修正するしかなかった。若者が中国で悪いことなど絶対に起きないという考えに戻ることはないと思う」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、25年の鉱工業生産を5.9%増と予想=国営テ

ワールド

日銀幹部の出張・講演予定 田村委員が26年2月に横

ビジネス

日経平均は続伸、配当取りが支援 出遅れ物色も

ビジネス

午後3時のドルは156円前半へ上昇、上値追いは限定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中