最新記事

中国社会

中国Z世代に広がる「寝そべり族」とは? ポストコロナにらむ習近平政権に難題

2023年1月23日(月)10時42分

難しい政策対応

習氏は年頭の演説で、若者の将来を改善することが不可欠だと認め「若者が豊かにならない限り、国家は繁栄しない」と言い切ったが、具体的な政策対応には言及していない。

何よりも社会の安定を専一に思っている共産党が、Z世代により大きな政治活動の余地を提供するとは考えられない。

その代わりに当局は、若者のために高給の仕事を創出し、彼らが親世代と同じように経済的に繁栄する道筋を確保しなければならない、と専門家は話す。

とはいえ、経済成長が鈍化する状況でその実現は難しくなる一方だ。しかも、政治アナリストやエコノミストによると、若者の生活水準を引き上げるための幾つかの政策は、過去20年間にわたって中国経済を15倍に拡大させる原動力となったエンジンを維持する、という別の優先項目とは相いれない。

例えば、Z世代に賃金が上がると期待させると、中国の輸出競争力は低下する。住宅価格をより手ごろな水準に下げれば、近年は経済活動全体の25%を占めてきた住宅セクターが崩壊しかねない。

習氏が2期目にハイテクや他の民間セクターに対する締め付けを強化したことも、若者の失業や就職機会の減少を招いた。

カリフォルニア大学バークレー校の都市社会学者、ファン・シュー氏は、中国政府がいくら「共同富裕」を唱えてもZ世代のために格差を解消するのは、事実上不可能だと言い切る。

シュー氏によると、彼らの親は住宅市場や起業を通じてばく大な富を築くことができたが、そうした面での資産形成は再現されそうにないと強調。格差をなくすとは不動産価格を押し下げて若者が住宅を購入できるようにするという意味で、これは上の世代に大打撃を与えると述べた。

国外に希望

こうした中で一部の若者は、中国国外に夢や希望を追い求めつつある。

大学生のデンさん(19)はロイターに、もう国内で豊かさを手に入れる余地はほとんどないと語り「中国で暮らし続ければ選択肢は2つ。上海で平均的な事務仕事に就くか、親の言うことを聞いて故郷に戻って公務員試験を受け、向上心もなく無為に過ごすかだ」と明かした。彼女はどちらの道も嫌って移住する計画だ。

バイドゥ(百度)のデータによると、上海で2500万人の市民が2カ月間ロックダウンを強いられた昨年の海外留学の検索数は2021年平均の5倍に達した。11月のゼロコロナ抗議騒動の期間も、同じように検索数が跳ね上がった。

アレックスさんは「中国の体制を受け入れるか、いやなら出ていくしかない。当局の力はあまりにも強く、体制を変えることはできない」と達観している。

(Casey Hal記者、Josh Horwitz記者、Yew Lun Tian記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中