15回投票の米下院議長選、極右議員への「とんでもない譲歩」が明らかに

極右は異常事態に付け込み、マッカーシー下院院内総務(写真)に数々の要求をのませた TASOS KATOPODIS/GETTY IMAGES
<マッカーシー選出にかたくなに抵抗したのは同じ共和党内の保守強硬派たち。マッカーシーは下院議長の座を得るために、下院の議事進行に大きな影響を与えかねない6つの「代償」を払っていた>
4日間にわたり15回投票が行われた挙げ句、共和党のマッカーシー下院院内総務は1月7日、米下院議長に選出された。この座を得るためにどんな代償を払ったのか。
マッカーシー選出にかたくなに抵抗したのは共和党内の20人ほどの保守強硬派だ。彼らをなだめるため、マッカーシーは一連の譲歩をした。
その中には下院議長の権限を弱めたり、下院における極右の影響力を拡大するような下院規則の改定も含まれる。
新規則は9日に下院で採択され、今後2年間下院はこの新規則の下で運営される。議会発足時の新規則採択はおおむね形式的な手続きにすぎないため、あまり注目されないが、今回の新規則には下院の議事進行に大きな影響を与えかねない内容が盛り込まれている。
以下は現時点で分かっているマッカーシーの譲歩の中身と、それが下院の議事運営や審議に及ぼす影響だ。
■議長解任を簡略化
これまで下院議長の不信任決議案は多数党の議員の半数以上の支持がなければ提出できなかったが、規則改定で議員1人でも出せることになった。大もめにもめた末、議長になったマッカーシーだが、そのクビは簡単に吹っ飛びかねない。
■極右が主要委員会入り
共和党の極右は重要議案を審議する委員会に自分たちの仲間を送り込みたいと要求した。まだ正式には委員の顔触れは決まっていないが、既に主要な委員会のメンバー候補として極右議員の名前がちらほら挙がっている。
■下院の議事運営を変更
共和党が多数派となった以上、共和党に有利になるよう下院を変えるべきだ──マッカーシーはそんな要求にも折れ、手始めに下院議事運営委員会に共和党の保守強硬派の議席を増やすと約束した。同委員会はどの法案をいつ審議に回すか、また内容の修正を認めるかを決める権限を持つ。
■債務上限引き上げの条件
債務上限引き上げを含む予算案は大幅な歳出削減とセットでなければ、成立を認めない。これも極右がマッカーシーに迫った条件だ。結果的に社会保障とメディケア(高齢者医療保険制度)の予算がばっさり切られる恐れがある。