プーチンの「使い勝手のいい駒」──支持してもロシアのために戦いたくないベラルーシ
Inching Toward Invading
英国防省は22年11月、ベラルーシの首都ミンスク南郊にあるマチュリシ飛行場に、ロシアの迎撃機「ミグ31」2機が駐機している可能性があるとの情報報告を発信した。
マチュリシでは、ミグ31に搭載される兵器の最高峰で、核搭載可能な極超音速ミサイル「キンジャール」のものとみられる容器の目撃報告も複数登場した。英国防省は、ウクライナ戦争へのベラルーシの関与拡大を告げる情報作戦の一環だと判断している。
いずれにしても、ベラルーシが攻撃に出たとして、確実な「敗者」になるのはルカシェンコその人だ。ウクライナ派兵を回避してきたおかげで国内で得ているある程度の支持は、前線から「貨物200便(戦死者運送を意味する軍用語)」が到着する事態になれば、あっという間に逆転しかねない。
数少ない高位の亡命ベラルーシ人であるアルツョームにとって、対ウクライナ参戦が「欧州最後の独裁者」に混乱をもたらす可能性は明らかだ。ベラルーシ軍内部ではロシア支持が厚いが、プーチンのために戦う意欲は欠けている。
「(ロシアの戦争犯罪は)心理戦の一環だと、ベラルーシ兵は聞かされている。ルカシェンコの言葉を信じる者もいる」と、アルツョームは話す。「多くの兵士はロシアを支持しているが、誰もロシアのために戦いたいと思っていない。これは自分たちの戦争ではないと知っているからだ」