プーチンの「使い勝手のいい駒」──支持してもロシアのために戦いたくないベラルーシ
Inching Toward Invading
戦いたくない兵士たち
国境地帯に配置中の兵員の推定数には、大きな幅がある。とはいえロシア軍の増援部隊を含めて、計3万人以上の展開に備えていると、ウクライナ当局者らは言う。
リウバコワの話では、ベラルーシ軍兵士はその一部を占めるにすぎない。「ウクライナ侵攻当初、戦闘準備が整っていたベラルーシ軍大隊の兵員総数は1万人弱。明らかに、ウクライナに打撃を与えるのに十分な規模ではないが、彼らを失えば、ルカシェンコにとって問題になるだろう」
ベラルーシの運輸労働者らが、メッセージアプリ「テレグラム」に作成したチャンネルでは、対ポーランド国境へ向かう兵士・軍事装備の動きを追うことができる。人気が高いあるチャンネルによれば、12月中旬のある日には、対ロシア国境から約60キロ離れた北東部の都市ビチェプスクからブレストに、軍需品と共に兵士計310人が送られた。
複数の衛星画像では、別の国境地帯の森林に新設された道路を移動する軍用車両が確認できる。ベラルーシ軍大隊にロシア軍兵士2万人以上が合流して新たな戦線を張る可能性があると、ウクライナ側は懸念している。
一方で、ウクライナ軍の下で戦うベラルーシ義勇兵集団、カストゥーシュ・カリノーウスキ連隊のバジム・カバンチュク副司令官は、ベラルーシの対ウクライナ参戦は間近とみる。
「ベラルーシ軍の8割は、この戦争を戦いたくないと思っている。ウクライナに派遣されたら、軍は崩壊する。それが分かっているから、ルカシェンコは(派兵を)避けようとしているが、事態がエスカレートして制御不能になり、総動員令発令や参戦に発展するはずだ」
派兵したら負けるのは
しかし、大量の地雷が仕掛けられた国境地帯を、多数の死傷者を出さずに越えるのは難しい。ベラルーシでの軍事的増強は、新たな戦線をちらつかせてウクライナ軍を攪乱するための情報作戦だと主張する向きもある。
ウクライナへの即時攻撃は、あり得ない展開ではないものの可能性が低いとリウバコワは言う。「これはロシアの情報作戦だと考えている。ベラルーシの現体制は使い勝手のいい仲間として、ロシアに協力している」
「即時攻撃に踏み切るだけの兵力が整っていない。だが22年2月(のウクライナ侵攻前)には、多くの人が判断を間違えた。プーチンにとって(ウクライナの首都)キーウ(キエフ)掌握は軍事的観点から見て最も論理的であり、ベラルーシを経由するのがキーウへの最短ルートだ」