ワグネルの囚人戦闘員5分の1に激減。「遺族」には空の棺が
Most of Wagner Prisoner Fighters Are Dead or Deserted After Soledar: Report
サンディエゴ州立大学のミハイル・アレクセーエフ教授(政治学)は、ワグネルにとって刑務所は、新兵の供給源のひとつに過ぎないと本誌に語った。
過去1カ月間のロシアメディアの報道から、ワグネルの募集広告が戦闘員候補だけでなく、医療関係者、運転手、雑用係もターゲットにしていることをアレクセーエフは指摘した。
同時に、ベラルーシを拠点とするウクライナ系メディアは、軍の地方組織が、地域のガードサービス・グループの訓練を強化していることを報じている。ガードサービスはワグネルを模倣した類似の会社で、警備員などの募集・採用活動を行っている。
「アゾフ海を挟んでウクライナ東部と向かい合うクラスノダール地方やその他ロシア各地には以前からワグネルの訓練センターがあり、新兵の訓練を続けている」とアレクセーエフは言う。「こうした取り組みが、ワグネルの勢力範囲と軍との協力関係が拡大する一因になっている可能性もある」
元受刑者や傭兵で構成されるワグネルの苦戦を伝える報道に加えて最近は、宣伝ほどの戦果がないためプリゴジンとプーチンの間には緊張が生じているという報道も出てきている。
プーチンとの複雑な関係
アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)は、ウクライナ東部ドネツク地方の要衝バフムトを占領するというプリゴジンの約束は果たされておらず、彼の「輝きは失なわれ始めた」としている。
さらに「プリゴジンの強気の発言は勢いで戦争をするカウボーイのようだ。大規模で規律と実戦能力を重んじる近代的軍隊には適しない」と評価を下した。
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は20日の記者会見で、ワグネルを「国際的犯罪組織」に指定したが、いわば傭兵団のトップに過ぎないプリゴジンは米政府に直接反論を試みた。英語とロシア語で、「わが社がどのような罪を犯したのか、明確にしてほしい」と手紙を書き、それを自身のテレグラム・チャンネルで公開したのだ。
だがプーチンとプリゴジンの実際の関係は、報道よりずっと複雑だ、とアレクセーエフはいう。
「ワグネルとロシア軍、そしてより広くはロシア国家の連携が遅巻きながら機能し始めている。ワグネルの戦闘員の一部がロシア軍部隊と共にバフムトからソレダールへ移動した動きなどはその例だ。ワグネルがロシア軍の戦力を増幅する役目を果たしている」と彼は語った。
「プーチンは、ロシア軍とプリゴジンを強力なアメとムチで操り、こうした相乗効果を強化したいのだろう」
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