最新記事

カタールW杯

W杯会場で、イランサポーター同士が衝突...政治めぐり暴力行為に発展した現場映像

Iranian fan wearing pro-protest shirt attacked in Qatar, video shows

2022年12月2日(金)12時11分
ジャック・ダットン
イランデモを支持するプッシー・ライオット

イラン対アメリカ戦の会場で、イランでの抗議デモへの支持を示すプッシー・ライオットのメンバー(11月29日) Cinema for Peace Foundation/Handout via REUTERS

<ワールドカップ・カタール大会のスタジアム周辺で、イランのサポーター同士が衝突する様子を捉えた動画が注目を集める>

サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会では、11月29日にアメリカとイランが対戦。政治的に対立する両国の試合は大きな注目を集めたが、その前夜にはイラン代表のサポーター同士の「衝突」も起きていた。現場で撮影された動画には、イラン国内で拡大中の抗議デモへの支持を表明するTシャツを着たサポーターが、イラン国旗を身に着けた別のサポーターから攻撃される様子が捉えられている。

■【動画】政府への抗議デモを支持するサポーターを取り囲み、攻撃するイラン国旗姿の男たち

動画には、激しく言い争う2人の男性を警備員が引き離そうとしている様子が映っている。片方の男性はイランの国旗を身にまとい、もう一人はイランの国旗と同じ緑、白と赤の文字で「女性、人生、自由」と書かれた黒いTシャツを着ている。イランで9月に22歳のクルド系の女性マフサ・アミニが、スカーフの着け方が不適切だとして警察に拘束され、その後死亡したことを受けて広がっている抗議デモへの支持を表明するTシャツだ。

29日の試合の前後には、ほかにもイラン代表サポーター同士の複数の衝突が確認されている。

抗議デモ支持のサポーターが感じた居心地の悪さ

ロンドン在住でイランの抗議デモを支持しているイラン人サポーター2人が、試合前に嫌がらせを受けたという報道もあった。そのうちの一人、マリアム(報復の恐れがあることからファーストネームのみ)は、後をつけてきた男性から顔を平手打ちされたという。警備員が仲裁に入ったものの、男性が身柄を拘束されることはなかった。

アメリカ在住で、イランの抗議デモで命を落とした若い女性たちの写真を持ち込んだイラン人サポーターたちは、29日のイラン対アメリカの試合をスタジアムで観戦している間、とても落ち着かない気分だったと語った。

メルダードというファーストネームのみを名乗ったこのサポーターは、「まるでイラン革命防衛隊(イランの最高指導者直属の軍事組織)に囲まれているような気分だった」と述べ、さらにこう続けた。「みんな私たちを見ていた」

英ガーディアン紙は、暴力については警備員が介入して止めたケースもあったものの、サポーター同士の衝突を阻止するための大規模な取り組みはなかったと報じた。

本誌はこの件について、ワールドカップ・カタール大会の組織委員会とカタール内務省にコメントを求めたが、返答はなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

自公両党、物価高対策でガソリンの定額引き下げ提言 

ワールド

中国、ローマ教皇死去に哀悼の意

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、26年に2%に=ECB専門家調

ビジネス

米関税、景気後退で業績悪化 企業の5割超が懸念=ジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 4
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 5
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ペー…
  • 6
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 9
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 10
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中