W杯会場で、イランサポーター同士が衝突...政治めぐり暴力行為に発展した現場映像
Iranian fan wearing pro-protest shirt attacked in Qatar, video shows
イラン対アメリカ戦の会場で、イランでの抗議デモへの支持を示すプッシー・ライオットのメンバー(11月29日) Cinema for Peace Foundation/Handout via REUTERS
<ワールドカップ・カタール大会のスタジアム周辺で、イランのサポーター同士が衝突する様子を捉えた動画が注目を集める>
サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会では、11月29日にアメリカとイランが対戦。政治的に対立する両国の試合は大きな注目を集めたが、その前夜にはイラン代表のサポーター同士の「衝突」も起きていた。現場で撮影された動画には、イラン国内で拡大中の抗議デモへの支持を表明するTシャツを着たサポーターが、イラン国旗を身に着けた別のサポーターから攻撃される様子が捉えられている。
■【動画】政府への抗議デモを支持するサポーターを取り囲み、攻撃するイラン国旗姿の男たち
動画には、激しく言い争う2人の男性を警備員が引き離そうとしている様子が映っている。片方の男性はイランの国旗を身にまとい、もう一人はイランの国旗と同じ緑、白と赤の文字で「女性、人生、自由」と書かれた黒いTシャツを着ている。イランで9月に22歳のクルド系の女性マフサ・アミニが、スカーフの着け方が不適切だとして警察に拘束され、その後死亡したことを受けて広がっている抗議デモへの支持を表明するTシャツだ。
29日の試合の前後には、ほかにもイラン代表サポーター同士の複数の衝突が確認されている。
抗議デモ支持のサポーターが感じた居心地の悪さ
ロンドン在住でイランの抗議デモを支持しているイラン人サポーター2人が、試合前に嫌がらせを受けたという報道もあった。そのうちの一人、マリアム(報復の恐れがあることからファーストネームのみ)は、後をつけてきた男性から顔を平手打ちされたという。警備員が仲裁に入ったものの、男性が身柄を拘束されることはなかった。
アメリカ在住で、イランの抗議デモで命を落とした若い女性たちの写真を持ち込んだイラン人サポーターたちは、29日のイラン対アメリカの試合をスタジアムで観戦している間、とても落ち着かない気分だったと語った。
メルダードというファーストネームのみを名乗ったこのサポーターは、「まるでイラン革命防衛隊(イランの最高指導者直属の軍事組織)に囲まれているような気分だった」と述べ、さらにこう続けた。「みんな私たちを見ていた」
英ガーディアン紙は、暴力については警備員が介入して止めたケースもあったものの、サポーター同士の衝突を阻止するための大規模な取り組みはなかったと報じた。
本誌はこの件について、ワールドカップ・カタール大会の組織委員会とカタール内務省にコメントを求めたが、返答はなかった。