ダイバーによるジンベエザメへの許されざる振る舞い...SNS動画に専門家から怒りの声
Man Filmed Riding World's Biggest Shark in Tourism Stunt
イメージ画像 MaxTopchij-iStock
<絶滅の危険が増大している種に指定されるジンベエザメに対する乱暴な扱いには、専門家たちからも批判のコメントが>
マレーシアの海でシュノーケルを楽しむ男性が、野生のジンベエザメに無造作に触れるだけでなく、背中に乗っている様子を映した動画が拡散され、人々の怒りを買っている。動画に映った乱暴な扱いは、絶滅の危険が増大している種にも指定されるジンベエザメの健康に大きな悪影響を与えかねない。
■【動画】許される行動ではない...ジンベエザメの背中にのしかかるダイバーの映像
マレーシアの英字新聞ザ・スターの報道によると、この男性はツアーガイドとみられている。撮影されたのは11月25日で、場所はボルネオ島の東海岸沖合に浮かぶシブアン島の近くだ。
同島が位置するセンポルナ地区のダイバー団体「センポルナ・プロフェッショナル・ダイバー・アソシエーション(SPDA)」のスジミン・イドリス会長は11月26日に声明を出し、「SPDAはすべてのダイビングセンターに対し、資格を有する観光ガイドのみを採用するよう求める」と呼びかけた。「センポルナ地区の観光業者に対し、従業員を適切に教育し、しかるべき意識を持つよう指導することを求める」
世界中どこでも、ダイバーは何があっても野生動物に触れないよう指導される。国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅の危険が増大している種に指定されているジンベエザメに、動画に映っているような行為をすることなど言語道断と言えよう。
ジンベエザメは、体長が最大で約12メートルに達する。しかし、その巨体とは裏腹に、餌にしているのは微小生物のプランクトンのみだ。人間に危害を加えることは滅多にないが、身を守るために怪我をさせる可能性はある。
米動物愛護団体ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(HIS)の国際メディア担当ウェンディ・ヒギンズは本誌に対して、以下のように説明した。「野生環境で暮らす海洋生物との接触には、常に人間と生物の双方に害を与える可能性がある。病気が感染するおそれもあり、野生動物とダイバーの健康に深刻な脅威となりかねない」
採餌や休息など自然な行動が乱される
「ジンベエザメに直接触れれば、その表面を覆っている保護粘液が損傷するおそれもある。ジンベエザメは比較的おとなしく、動きも遅いかもしれないが、野生環境で人間や船と接触すれば負担やストレスがかかり、採餌や休息などの自然な行動が乱されかねない。普通なら使う必要のないエネルギーを、人との接触に費やさざるを得なくなる」とヒギンズは語った。
「野生環境でジンベエザメ・ウォッチングを楽しみたいなら、一定の距離を置いた安全なところから観察するのがいちばんだ」とヒギンズは続けた。
ジンベエザメは、餌を求めて水深1000メートルまで潜る。餌を食べた後は海面まで戻り、体を温めたり休めたりしてから再び潜っていく。問題の動画に映っているのは、大事な休息のタイミングであり、男性はそれを妨げていることになる。