ウクライナ避難民だけ優遇?──難民支援の「ダブルスタンダード」の不都合な現実
Less Money for the Rest
データ活用型の貧困対策に取り組む国際組織デベロップメント・イニシアティブズの最近の報告書によれば、12~21年に発生した危機に絡む支援要請の平均充足率は47%。だが、ロシアのウクライナ侵攻以降は30%に低下している。
活動家らは対ウクライナ支援意欲を歓迎するものの、難民・移民をめぐる二重基準が露呈していると指摘する。
厳しい移民政策をとるデンマークは、シリア難民に故国の「安全地帯」への帰還を促し、広く批判されている。ところが、ウクライナ避難民の受け入れに対しては、政策を即座に転換した。
豊かな北欧が後ろ向き
ウクライナ戦争の影響で原油価格が高騰するなか、北欧の産油国ノルウェーは石油輸出で記録的収益を得ている。
援助団体ノルウェー・チャーチエイドの政治・社会担当責任者代理、グドルン・ベルティヌセンの話では、石油輸出による収益は21年には8300億クローネ(約11兆4600億円)だったが、22年は1兆5000億クローネ(約20兆7000億円)に達した可能性がある。
それでも23年度予算案で当初、ODA(政府開発援助)拠出額の国民総所得(GNI)比を現行の1%から0.75%に引き下げる方針を掲げ、人道団体の怒りを買った。スウェーデンでも、支援に消極的な政府に市民社会は激怒している。
「世界で最も裕福で平和な国の1つで、経済・人道開発の国際ランキングで常に最上位層のスウェーデンが、国際援助の『余裕がない』というなら、どこに希望があるのか」。コンコードの政策顧問、アサ・トマソンはそう嘆く。
スウェーデンでは22年10月に新たな連立政権が発足。右派で反移民的なスウェーデン民主党が閣外協力する新政権は既に、難民支援を10億ドル以上削減している。
予算減少や使途の切り替えの影響を完全に把握するのは難しい。どの活動の資金がウクライナ避難民支援に回されるのか、各国政府は明らかにしていないからだ。それでも、大勢の人の未来が危うくなっていることは間違いない。
トマソンによれば、援助削減が引き起こしかねない影響について、コンコードの参加団体は国連機関に尋ねた結果を報告書にまとめた。
中核的支援が30%減少すれば「200万人が安全な水へのアクセスを失い、児童200万人が学校に行く権利を奪われ、10代の若者400万人が性教育や避妊具へのアクセスをなくす」だろうと指摘している。