ウクライナ避難民だけ優遇?──難民支援の「ダブルスタンダード」の不都合な現実
Less Money for the Rest
援助減が難民増を生む
イギリスは21年に、ODA拠出額の対GNI比をそれまでの0.7%から、一時的に0.5%に引き下げることを決定した。その直接的結果として、内戦が続くシリアで、少なくとも4万人の子供が教育を受けられなくなった。
ODA削減を決めた当時、英財務相だったリシ・スナクは今や首相として、対外援助資金の国内への振り向けをさらに進めている。非営利のシンクタンク、世界開発センターによれば、削減分の大部分はウクライナ避難民の受け入れに使われている。
イギリスの援助削減は、アフリカなどに「破壊的な打撃」を与えていると、トニー・ブレア元英首相はオブザーバー紙で指摘する。
「私たちが擁する資金の大半が、今ではウクライナ避難民などにつぎ込まれている。従って、アフリカ開発などのために残された金額はゼロに近い」
慈善活動家は、不足を補うために立ち上がっている。
「欧州の予算はウクライナ戦争で大きな影響を受け、現時点では援助動向は低調なままだ」と、マイクロソフトの共同設立者ビル・ゲイツは語っている。彼が創設したビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団は70億ドル規模のアフリカ支援を約束している。
欧州各国が援助を行う大きな理由の1つは、難民・移民を生み出す本質的な要因を減らすことだ。ならば、援助削減は極右政治勢力にとって「オウンゴール」になる可能性がある。生活必需品も手にできない大勢の人が、欧州を目指すかもしれないからだ。
活動家が声をそろえるように、ウクライナの人々には可能な限りの手段で力になるべきだ。だがそのツケを、別の地域の最貧困層が支払うことになってはならない。