最新記事

フィギュアスケート

日本のフィギュア界は全カテゴリーで「かつてない黄金期」を迎えている(茜灯里)

2022年12月24日(土)12時15分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)

北京五輪のフィギュア団体競技で銅メダルを獲得したことにも象徴されるように、日本のフィギュアスケートは、全カテゴリーでかつてない黄金期を迎えています。とりわけ男子と女子のカテゴリーでは、「世界選手権に出場するのが最も難しい国」となっています。

フリーでの注目選手を、世界選手権への出場という観点から見てみましょう。

男子(3枠):盤石の宇野選手と混戦の2枠

ショートでは、宇野選手が、2位に10点以上の差をつける100.45点をマークしました。コンビネーションジャンプの2つ目のジャンプが予定の3回転から2回転になったものの、ジャンプの転倒や回転不足などの大きなミスはありませんでした。フリー演技の予定構成で得られる得点が他の選手よりも高いこと、失敗があっても大きく崩れにくいタイプであることから優勝の最右翼で、3位以内はほぼ確実と言えそうです。もし3位に届かなくても、現世界王者かつ直近のグランプリファイナルで優勝している実績があることから、世界選手権に選出されるのは間違いないでしょう。

2位から6位までの選手は、いずれもジャンプで大きな減点がありました。

2位で宇野選手と同じステファン・ランビエールコーチに師事する島田高志郎選手、3位でGPF銀の山本草太選手、4位で昨シーズンの世界選手権に出場した友野一希選手はいずれも80点台後半で、3点以内の僅差で並んでいます。さらに80点台前半に、GPFに出場した佐藤駿選手が5位、北京五輪銀で今季はケガのため全日本選手権が初試合となった鍵山優真選手が6位と続きます。

3位の山本選手は4回転サルコウの予定が2回転となり、ゼロ点扱いとなりました。4回転が成功していれば、10点程度上乗せできたはずです。フリーでGPFのようなほぼミスのない演技ができれば、代表選出に大きく近づくでしょう。

6位の鍵山選手はショートでジャンプの難易度を下げていることと、プログラムを滑り込めていない様子もあり、まだ本調子でないことが見て取れます。けれどジャンプなどの技術点だけでなく演技構成点(PCS)でも評価の高い選手なので、無理のない演技構成を確実にこなすことが世界選手権出場への鍵を握るかもしれません。

女子(3枠):安定の神戸組(坂本・三原)に大技を持つ選手が食い込むか

女子シングルのショートで首位に立ったのは、現世界女王の坂本選手です。代名詞とも言えるスピード感あふれるスケーティングで運動量の激しい振付を踊り、雄大なジャンプを織り交ぜながら、ほぼミスのない演技プログラムをやり遂げました。

GPFではショート1位からフリーで6位と失速してしまいましたが、GPFから戻って「自分的に何かがふっきれた感覚でいて、そこからすごく前向きに捉えられるくらい変わった」と話しており、フリーに臨む際にプレッシャーはなさそうです。女子シングルで世界選手権代表に最も近い選手と言えます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中