日本のフィギュア界は全カテゴリーで「かつてない黄金期」を迎えている(茜灯里)
スケートカナダ2022男子フリーでの宇野と、スケートアメリカ2022女子ショートプログラムの坂本 FROM LEFT:John E. Sokolowski-USA TODAY Sports via REUTERS, Eric Canha-USA TODAY Sports via REUTERS
<羽生結弦の引退で観客が減ったと言われるフィギュアスケートだが、今年のグランプリファイナルでは4カテゴリー中3カテゴリーで日本人選手が優勝。まさに「黄金期」だ。そんな日本人選手たちにとって重要な意味を持つ全日本選手権のショートプログラム、リズムダンスの結果から、フリーでの注目選手を紹介する>
年の瀬の恒例である「全日本フィギュアスケート選手権大会(第91回)」が、今年も22日から東和薬品RACTABドーム(大阪)で開催されています。
全日本選手権では、男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスの4カテゴリーの選手が、それぞれ2つの演技で競います。初日と2日目は予選にあたり、22日にはアイスダンスのリズムダンスと女子シングルのショートプログラムが、23日にはペアと男子のショートプログラムが実施されました。24日にはアイスダンスのフリーダンスと女子のフリースケーティング、25日にペアと男子のフリースケーティングが行われて勝敗が決します。
日本のフィギュアスケート選手にとって、なぜ全日本選手権は最も重要な試合なのでしょうか。また、ショートプログラム、リズムダンスの結果から、フリーの注目選手を紹介します。
全日本選手権の重要性
フィギュアスケートでは、オリンピックがないシーズンは世界選手権が最も重要な大会です。選手にとって、出場すれば世界のトップと戦える、良い成績が名誉になるというだけではありません。日本にとっても、翌年の世界選手権や(五輪前年は)五輪に派遣できる選手の数(枠)がこの大会で決まるため、日本フィギュアスケート界の隆盛に直結します。
世界選手権はシーズン最終盤の3月に開催されますが、とりわけ男女のシングルでは、全日本選手権での成績が派遣選手の選考で最も重視されており、選手の発表も全日本選手権の全日程が終わった直後に行われています。今シーズンの世界選手権は日本(さいたま市)で行われることもあって、世界選手権の出場候補選手は例年よりも注目を集めています。
さらに、全日本選手権の成績は、次のシーズンの強化選手指定にも直結します。
日本代表選手として国際大会に出場するためには強化選手に指定される必要があるため、強化指定はオリンピックや世界選手権を目指す選手にとって、最初の目標となります。また、強化選手に指定されると特別強化、強化A、Bのランクに応じて強化費が支払われ、スポンサーも付きやすくなるため、競技活動の資金繰りにも大きく影響します。
全カテゴリーでかつてない黄金期
近年の日本フィギュアスケート界は、スケートファンに留まらない社会的なフィーバーを引き起こすスターを二人輩出しました。浅田真央さんと羽生結弦さんです。両者は現在もプロスケーターとしてアイスショーで活躍していますが、試合を観戦しに来る観客は二人の現役時代と比べると少なくなったとも言われています。
けれど、現在の世界王者は男女とも日本人選手(宇野昌磨選手と坂本花織選手)です。全日本選手権の2週間前に行われた、シーズン前半戦で最も重要な国際試合であるグランプリファイナル(GPF、12月8~11日、イタリア)では、4カテゴリー中、アイスダンスを除く3カテゴリーで日本人選手(男子:宇野選手、女子:三原舞依選手、ペア:三浦璃来・木原龍一組)が金メダルを獲得しました。GPFへの出場には至りませんでしたが、今年はアイスダンスの活躍も目覚ましく、「かなだい」の愛称で知られる村元哉中・髙橋大輔組はデニス・テン・メモリアル・チャレンジ(10月26~29日、カザフスタン)で、日本人カップルとしての初めてISU(国際スケート連盟)公認試合で優勝しています。