日本のフィギュア界は全カテゴリーで「かつてない黄金期」を迎えている(茜灯里)
2位の三原選手は、儚げな雰囲気と、闘病や不運にもくじけずにスケートを続けた芯の強さが演技に共存するところが魅力です。昨年の全日本選手権では、北京五輪と世界選手権の代表の座を惜しくも逃しましたが、今年は四大陸選手権、2回のグランプリシリーズ、GPFなど出る試合はすべて優勝して勢いを増しています。安定したジャンプに定評があるので、フリーで大きく崩れる可能性は考えにくいでしょう。
3位の千葉百音選手、4位の島田麻央選手はジュニアの選手で、大健闘しました。島田選手は今年のジュニアグランプリファイナルの優勝者で、フリーには3回転半ジャンプと4回転ジャンプを入れてくる可能性があります。けれど、ジュニア選手には年齢制限などがあって、世界選手権の代表争いに関わることは、まずありません。
ショートは決められた要素のジャンプを3本飛ばなければならないので、1つでも失敗すると大減点になるおそれがあります。6位の河辺愛菜選手、11位の紀平梨花選手、17位の住吉りをん選手、18位の渡辺倫果選手は、いずれもショートで不本意なジャンプがありました。3回転半や4回転ジャンプも飛ぶ可能性がある選手ですが、高難度ジャンプで攻めるか、ジャンプの難度は上げずにきっちりとまとめて高得点を狙っていくのかは、方針が分かれるところでしょう。
ペア(3枠):明記された特例で救済する価値がある「りくりゅう」
北京五輪に出場し、GPFでは日本人ペアとして初優勝した第一人者の「りくりゅう」こと三浦璃来・木原龍一組が、練習拠点のカナダから日本に向かう時に航空機トラブル(遅延、ロストバゲージ)に見舞われ、競技開始前に帰国はできたものの全日本選手権への出場を断念しました。
日本スケート連盟の世界選手権への派遣選手選考基準には「最終選考会である全日本選手権大会への参加は必須である」と明記されています。もっとも、但し書きに「やむを得ない理由で全日本選手権に参加できなかった場合、過去に世界選手権大会3位以内に入賞した実績のある選手であれば、選考することがある」とあります。三浦・木原組は昨シーズンの世界選手権銀メダリストなので、あてはまります。
この規定の厳密さを表す例に、21年の北京五輪への派遣選抜がかかった全日本選手権で、過去二年間、優勝していた紀平選手がケガからの回復が遅れて出場できず、世界選手権の最高成績は19年の4位だったことから救済措置されなかったことがあります。
日本はペアで3枠を持っていますが、全日本選手権に出場しているのは世界ジュニア選手権を目指す「はるすみ」こと村上遥奈・森口澄士組の1組だけです。三浦・木原組は明文化された特例で、胸を張って世界選手権に派遣されてよいのではないでしょうか。
なお、村上・森口組は、今年のジュニアグランプリファイナルに参加した実力派ペアです。驚くのは、両者ともペア競技とシングル競技と掛け持ちしていて、二人とも今回の全日本選手権ではシングルでも予選を見事に突破しています。未来の日本のペア競技を背負う可能性のある逸材の、ペア、シングルそれぞれでのフリー演技も期待しましょう。