「あなただけではない...」不安症、親の育て方が大きく関係──治療の最前線
THE ANXIETY EPIDEMIC
NBAのケビン・ラブや水泳のマイケル・フェルプスなど、大物アスリートも近年、不安との闘いを率直に語るようになった。ここ1~2年ほどの間に、体操のシモーネ・バイルズやテニスの大坂なおみがメンタルヘルスの問題を明かしている。
幸い、不安の原因や、治療の幅広い選択肢や有効性に関する科学的洞察も増えつつある。最近の研究から、家族内発症の不安気質には、遺伝的要因だけでなく、子育てのスタイルが子供の不安に大きく関係することが分かってきた。
最も効果的な治療は、最新の研究によれば、長期間の心理療法ではない。もちろん、大麻でもない。不安になる要因に子供が萎縮するのではなく、向き合えるように手助けする比較的短期間の療法を、専門家は推奨する。
いわゆる「抗不安薬」については、不思議なことに大半の専門家が、副作用を懸念して使わないように助言している。抗鬱剤のほうがはるかに効果があると言う。
「私がこの世界に入った1980年代は、不安症の最善の治療方法について何も分かっていなかった」と、エール大学児童研究所の不安障害プログラムのディレクターで児童精神医学者のウェンディ・シルバーマン教授は言う。「私たちは大きな進歩を遂げてきた」
「正常な不安」と区別する
その進歩を、多くの人が直接感じられるようになるかもしれない。USPSTFの提言は、子供に関する同様の提言と併せて、深刻なメンタルヘルスの問題に最新の治療法を適用することを目指している。近いうちに医師は子供や65歳未満の成人患者に対し、喫煙や飲酒について確認するのと同じように、不安について日常的に尋ねるようになるかもしれない。
これらの提言の背景には、驚くべき統計がある。USPSTFによると、アメリカの男性の26%以上、女性の40%以上が、生涯のうちに不安症を経験するとみられるのだ。しかも、発症から1年以内に治療を始める成人は11%。発症から治療を受けるまでの期間の中央値は、実に23年に及ぶ。08~19年に自殺未遂をした成人の35~45%が、必要なメンタルヘルスのケアを受けていなかった。
提言が採択されれば、プライマリーケア医のスクリーニング検査に、従来の喫煙、アルコール、薬物使用と並んで「不安症」が追加される。医師が使う質問表は、いわば「不安の体温計」だ。不安の程度を測定し、不安症と「正常な不安」を区別できるように設計される。実際、不安に対処する最初のステップは、全ての不安が悪いわけではないと認識することだ。誰でも時々不安を感じる。むしろ、いいことでもある。