奨学金制度は「教育の機会均等」の実現には寄与している
大学生の奨学金利用率は所得水準と相関している nirat/iStock.
<問題なのは、給付型の割合がまだまだ少なく、依然として貸与型が主流なこと>
教育基本法第4条は、教育の機会均等について定めており、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない」と規定している。
奨学金は、奨学の措置の代表的なものだ。2020年度から、従来の貸与型に加え、返済する必要のない給付型も創設されている。住民税非課税世帯の子弟が自宅外から大学に通学する場合、月額7万6000円が給付される。それ以外の世帯でも年収400万未満の世帯は3分の2、年収400~460万の世帯は3分の1の支援が受けられる。消費税の増税分を財源とするもので、これまでにない画期的な奨学制度だ。
今では奨学金を利用する学生が増えていて、大学生のおよそ半数が貸与ないしは給付の奨学金を使っている(日本学生支援機構『学生生活調査』2020年度)。家庭環境で分けると、年収が低い家庭では利用率が高い。<図1>は大学生を5つの階層に分け、奨学金の利用率をグラフにしたものだ。
奨学金を使っている学生の割合は、年収300万未満の家庭では83.9%、300~400万円台では72.9%と高くなっている。
縦軸では5つの年収階層の構成比を表現しているが、年収700~900万円台と1000万以上の階層で全学生の半分が占められ、年収300万円未満の家庭は1割でしかない。だがこの分布は、大学生の子がいる年代の世帯の年収分布と大差ない。大学生の家庭環境の偏りは大きくはない(有力大学は別)。年収が低い家庭の学生は奨学金を使っているためで、奨学金は「教育の機会均等」の実現に寄与している。下の2つの階層では、給付型の奨学金をもらっている学生も多いだろう。
2021年度の統計によると、給付型奨学金を使っている大学生は23万2000人ほどで全学生に占める割合は8.8%。この数値には地域差があり、東京都内の大学生の中では6.7%だが、沖縄県の大学生では21.0%にもなる。沖縄県の次に高いのは青森県の15.4%、その次は宮崎県の14.7%だ。