タイ、ミャンマー関係者招きASEAN非公式会議 対軍政めぐり加盟国に亀裂?
ミャンマー問題への対応めぐりASEAN内での軋轢が見え始めた……。写真はASEANの紋章。 REUTERS/Cindy Liu
<クーデータからまもなく700日。軍政と民主勢力の対立は、周辺国をも巻き込み......>
東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国の一部がミャンマー軍政関係者を招いて会議を開催した。会議はミャンマーとその最大の後ろ盾である中国と関係が深いカンボジア、ラオス、タイ、ベトナムの外相が参加してタイの首都バンコクで12月22日に開かれた。
関係者によるとミャンマーに対して強硬姿勢を続けているマレーシア、インドネシア、シンガポール、フィリピンは会議への招待を受けたものの参加しなかったという。
この会議はASEANの一連の公式会議とは異なり、行き詰まりをみせているASEANのミャンマー問題について打開の道を探りたいとするタイ外務省の主導で開催されたという。
各国外相に加えてミャンマーからは軍政が任命したワナ・マウン・ルウィン外相が参加したほか、カン・ゾウ対外経済関係相、コー・コー・ライン国際協力相もバンコクを共に訪問して会議参加者やタイ政府関係者と会談したという。
こうしたことからミャンマー軍政がこの会議を通じてASEANの一部加盟国との関係を深め、同時に逼迫しているとされる国内経済への支援の道を探ったものとみられる。
民主派勢力をテロ組織と批判
地元メディアの報道などによると、会議に参加したミャンマー側は、軍政に反発して民主政府の復活を求める武装市民勢力「国民防衛軍(PDF)」や国境付近で軍と対峙する少数民族武装勢力を「テロリストの組織」と批判したという。
ミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政は今回の会議に参加した4カ国を味方にしてASEANの分断を図ろうとしているのではないかとの見方もでている。
2021年2月1日のクーデター発生を受けて同年4月にインドネシア・ジャカルタで開催されたASEAN緊急首脳会議は、軍政を代表してミン・アウン・フライン国軍司令官を「ミャンマー首脳格」として招待し、全会一致で「5項目の合意」を採択した。
5項目は①市民を標的にした武力行使の即時停止と関係者全員の自制、②国民の利益を最優先とし平和的な解決を目指して関係者全員で建設的な話し合いの実施、③ASEAN事務総長の協力を得て話し合いの過程にASEAN特使を派遣し対話を仲介する、④ASEAN人道支援局からの人道的支援の受け入れ、⑤ASEAN特使の受け入れと関係者全員との面会、というものだ。
以後ASEANのミャンマー問題への対処はこの「5項目の合意」を基本線として交渉が進められた。