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台湾半導体「半導体の巨人」TSMC 中国、アメリカ、台湾を渡り歩いた創業者の生涯
MORRIS CHANG
BILLY H.C. KWOKーBLOOMBERG/GETTY IMAGES
<台湾を半導体生産大国へと導いたTSMC創業者のモリス・チャン。米中対立が激化するなか、世界の半導体供給のカギを握るチャンは引退後も影響力を持つ>
張忠謀(モリス・チャン)が語れば、世界は耳を傾ける。何しろ彼が1987年に創業した台湾積体電路製造(TSMC)は、世界で使われている先端マイクロチップの半分以上を製造している。米中の対立が激化するなか、半導体の安定供給の確保を含めて、台湾を中国から守りたいという国は少なくない。
チャンは1931年に中国で生まれ、両親と共に共産主義から逃れて香港に移住した。49年にアメリカに留学し、マサチューセッツ工科大学とスタンフォード大学で学位を取得。半導体大手テキサス・インスツルメンツで副社長まで昇進した。85年に半導体産業の育成のため台湾政府に招聘され、第2のキャリアを築き上げた(ちなみに、創業当初にインテルに出資を打診して断られた)。
TSMCの成功のカギは、製造と設計を分離して、効率性を著しく高めたことだ。それまでインテルなどの半導体メーカーは、基本的に両方を行っていた。しかし、分業が進み、エヌビディアなど創造性に富んだ多くのスタートアップが設計に特化して、製造に特化したファウンドリ企業のTSMCに製造を委託した。
テクノロジー製品の普及を追い風に、TSMCは成長を遂げた。2022年12月現在の時価総額は4110億ドルで、インテルやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の3倍以上だ。
18年に信頼する部下にバトンを渡したチャンは、自伝を書き、ブリッジを楽しみ、アーティストで慈善家の妻と旅行をするなど穏やかに暮らしている。一方で、11月には台湾総統の特使としてAPECに6回目の出席。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席など世界の指導者と言葉を交わしてもいる。
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