中国反政府デモの発火点となった高層住宅火災で起こったゼロコロナの悲劇とは
"They never care": Angry relatives of China fire victims dispute death toll
ウルムチの高層住宅の火事と消防隊(11月24日) From video obtained by REUTERS
<習近平国家首席の退陣を叫ぶ抗議デモが中国全土に広がるきっかけとなったウルムチの火災で、人はいかにしてゼロコロナの犠牲になったのか。本当は何人が犠牲になったのか>
中国北西部の新疆ウイグル自治区ウルムチ市で、中国政府の新型コロナウイルス対策に抗議する大規模なデモが発生した。ウルムチでは24日に発生した火災で複数の犠牲者が出ており、過度な新型コロナ対策が救助の障害になったのではないかと市民の怒りが高まっている。またこの火災で家族5人を失ったという女性は、政府が発表した死者数に異議を唱えている。
24日夜にウルムチ市内の高層住宅で発生した火災は、鎮火までに3時間を要し、地元当局によればこの火災で10人が死亡、9人が負傷した。
新疆ウイグル自治区にはチュルク語を話すウイグル人が暮らしており、彼らの大半がイスラム教徒だ。中国共産党は1949年にこの地域を支配下に組み込んで以降、テロや過激主義、分離主義の取り締まりを理由に挙げて、長年にわたってウイグル人を弾圧してきた。
中国は新型コロナウイルスのパンデミックが発生してから3年が経った現在も、習近平国家主席が厳しい「ゼロコロナ政策」を維持している。再び感染者が増えてきているなか、ウルムチは約3カ月前からロックダウン下に置かれている。
家族5人が焼け死んだ
MERHABA MUHAMMAD
こうしたなかで発生した24日の火災を受けて、ウルムチをはじめとする中国各地で数年ぶりとなる大規模な抗議デモに火がついた。多くの人が、悲劇は防げたはずだと考えている。
新疆ウイグル自治区出身のウイグル人で、現在はトルコで暮らすメルハバ・ムハマド(27)は、叔母のヘルニシャハン・アブドゥレヘマ(48)とその4人の子ども(5~13)を火災で亡くした。彼女は本誌に対して、叔母一家は5年前から、火災のあった高層住宅の19階で暮らしていたと語った。
ムハマドは留学のために2016年にトルコに渡って以降、叔母とは連絡が取れていないという。新疆ウイグル自治区では、海外にいる親族と連絡を取ったウイグル人は、身柄を拘束されて「再教育施設」に収容されるおそれがあるのだ。
ムハマドは、ウルムチ住民がSNSで交わすグループチャットのスクリーンショットを見て叔母の死を知ったという。「チャットには『1901号室を助けて』と書かれていた。叔母の家だ」と彼女は述べた。
自分の親族だけでも5人が死亡しているのだから、中国政府が公式発表した火災の死者数が本当のはずがない、と彼女は主張した。
「死者がたった10人だなんて。私の叔母一家だけで5人死んでいるのに。ソーシャルメディアでは44人が死亡んだ、という人もいた。それより多かった可能性もある。ある母親は『2人の子どもを失った』と号泣していた」