「ポチョムキンの遺骨を掘り出して略奪、ウクライナ文化遺産を窃盗......」ロシア軍の蛮行があきらかに
ロシア軍はこうした考古学上の貴重な文化財に加え、セバストポリのクロシツキー美術館などをターゲットとし、19世紀の名画などをロシア本土へ運び出そうと計画している模様だ。
大聖堂から遺骨を掘り出して略奪
運び出されている文化財は、美術品だけに留まらない。米CNNは10月28日、18世紀ロシアで活躍したグリゴリー・ポチョムキン司令官の遺骨がウクライナ領外へ持ち出されたと報じている。
ヘルソンに位置する聖エカテリーナ大聖堂に安置されていた遺骨は、ドニエプル川を越えた東岸ロシア領へと持ち出された。移送先の詳細は明かされていない。ポチョムキン司令官は1783年にトルコからクリミアを併合する際に重要な役割を果たした人物であり、プーチン氏が名将として慕っている。
ほか、18世紀ロシアで最も有能な指揮官とされたフョードル・ウシャコフ海軍司令官など、複数の人物の記念碑がロシア領へと運び出されている。同州知事で親ロシア派のウラジミール・サルド氏は、安全が確認され次第これらの文化遺産は同地に戻される予定だと説明しているが、実現の見込みは不透明だ。
一部史料はブラックマーケットに流出
在ニューヨーク・ウクライナ博物館のピーター・ドロシェンコ館長は、米アートネットの取材に応じ、史的価値の高い多くの遺物が「ブラックマーケットおよびモスクワの博物館に出回っている」と指摘している。ロシア軍の一部兵士が金銭目的で売却している可能性が想定される。
治安が悪化し都市機能が麻痺するなか、ウクライナの貴重な文化遺産がどの程度の規模で略奪されているのかについては、正確な被害状況を把握することすら困難な状況にあるという。
略奪に加え、貴重な歴史的史料の破壊も深刻となっている。ユネスコによると2月の侵攻から9月時点までに、ウクライナの13の博物館、37の歴史的建造物、36の文化施設、82の宗教施設などが被害を受けた。ウクライナ文化省は9月、文化遺産の破壊などが500件以上に達したと発表している。
ロシアによる侵攻は目の前にある人間の暮らしを破壊しているだけでなく、ウクライナの将来に引き継がれるべき重要な遺産のあり方をも変えようとしているようだ。