最新記事

略奪

「ポチョムキンの遺骨を掘り出して略奪、ウクライナ文化遺産を窃盗......」ロシア軍の蛮行があきらかに

2022年11月11日(金)19時30分
青葉やまと

ウクライナ南部ヘルソン州、ドニエプル川の東岸のノヴァ・カホウカ  REUTERS/Alexander Ermochenko

<プーチンが発令したウクライナ東部・南部4州への戒厳令により、ウクライナの文化財の略奪が事実上合法化されていた......>

ロシアのプーチン大統領は10月、占領下にあるウクライナ東部および南部の4州に対して戒厳令を発令した。戦時下における国家の権力を強化するもので、防衛産業への従事を強制したり、通話内容を国家が確認したりといった行為が合法化された。

これに伴い、ウクライナにおける文化財保護の観点で危機が訪れている。占領下のウクライナ地域の博物館から文化遺産を持ち出すことが実質的に合法となったためだ。

もっとも、ロシア側も略奪を堂々と認めているわけではない。建前となっているのは、戦地からの文化財の退避だ。危険な地帯から価値ある美術品などをロシア本土に移送することで、安全に保護するのだという。

だが、実質的な略奪だとして、海外のアート関連メディアはプーチン政権の蛮行を非難する報道を繰り広げている。

「ナチスさながら」窃盗合法化に批判の声

英アート・ニュースペーパー誌は、「ウラジーミル・プーチンの戒厳令は、ウクライナで美術品を略奪する『合法的』な後ろ盾をロシア軍に与えた」と報じ、「ナチスが自らのアート窃盗行為を合法化したのと似た行為」だと非難している。

ロシアが3月2日に征服したウクライナ南部・ヘルソンの街(11月10日、ロシア軍の撤退が報じられている)において、美術館や博物館から絵画および価値ある財宝の類が持ち出されている。目下運び出し作業の進行中であり、5月ごろにはすでに略奪が始まっていた模様だ。

この時期はウクライナが反転攻勢に出た時期と一致しており、都市がまだ支配下にあるうちに可能な限りの文化財を占有しようと図った可能性がある。

ウクライナ文化省は10月15日、ロシアの略奪行為は紛争下における文化財保護を定めたハーグ条約に違反すると非難した。同省はユネスコに対し緊急の介入を求めたものの、ロシアが略奪中止の要請に応じる見込みは薄い。

歴史遺産の宝庫・クリミア半島南部に訪れた危機

ウクライナ文化省によるとクリミア半島の美術館および博物館には、貴金属を用いた文化財が多数収蔵されている。アート・ニュースペーパーは、ロシア軍がこうした金銭的な価値が高い文化財をほぼ全て持ち去る計画だと分析している。

文化財保護上とくに重要な拠点として、クリミア半島南端のセバストポリの街に位置するケルソネソス博物館保護区が挙げられる。さらに、半島南端のセバストポリの一帯は古代ギリシャ文明の重要な遺構が集中しているほか、半島東端のケルチ地域に目を移せば、金、宝石、古代の貨幣などを収蔵するケルチ考古学・歴史博物館が立地している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシアルピアが最安値更新、中銀の独立性巡る懸

ビジネス

NYSE、24時間対応のトークン化証券取引プラット

ビジネス

中国の大豆輸入、米国シェア15%に低下 南米産にシ

ワールド

ベトナム共産党大会、ラム書記長が演説 経済成長10
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 2
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危険生物」を手渡された男性、「恐怖の動画」にSNS震撼
  • 3
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 4
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 5
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 10
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中