「ポチョムキンの遺骨を掘り出して略奪、ウクライナ文化遺産を窃盗......」ロシア軍の蛮行があきらかに
ウクライナ南部ヘルソン州、ドニエプル川の東岸のノヴァ・カホウカ REUTERS/Alexander Ermochenko
<プーチンが発令したウクライナ東部・南部4州への戒厳令により、ウクライナの文化財の略奪が事実上合法化されていた......>
ロシアのプーチン大統領は10月、占領下にあるウクライナ東部および南部の4州に対して戒厳令を発令した。戦時下における国家の権力を強化するもので、防衛産業への従事を強制したり、通話内容を国家が確認したりといった行為が合法化された。
これに伴い、ウクライナにおける文化財保護の観点で危機が訪れている。占領下のウクライナ地域の博物館から文化遺産を持ち出すことが実質的に合法となったためだ。
もっとも、ロシア側も略奪を堂々と認めているわけではない。建前となっているのは、戦地からの文化財の退避だ。危険な地帯から価値ある美術品などをロシア本土に移送することで、安全に保護するのだという。
だが、実質的な略奪だとして、海外のアート関連メディアはプーチン政権の蛮行を非難する報道を繰り広げている。
「ナチスさながら」窃盗合法化に批判の声
英アート・ニュースペーパー誌は、「ウラジーミル・プーチンの戒厳令は、ウクライナで美術品を略奪する『合法的』な後ろ盾をロシア軍に与えた」と報じ、「ナチスが自らのアート窃盗行為を合法化したのと似た行為」だと非難している。
ロシアが3月2日に征服したウクライナ南部・ヘルソンの街(11月10日、ロシア軍の撤退が報じられている)において、美術館や博物館から絵画および価値ある財宝の類が持ち出されている。目下運び出し作業の進行中であり、5月ごろにはすでに略奪が始まっていた模様だ。
この時期はウクライナが反転攻勢に出た時期と一致しており、都市がまだ支配下にあるうちに可能な限りの文化財を占有しようと図った可能性がある。
ウクライナ文化省は10月15日、ロシアの略奪行為は紛争下における文化財保護を定めたハーグ条約に違反すると非難した。同省はユネスコに対し緊急の介入を求めたものの、ロシアが略奪中止の要請に応じる見込みは薄い。
歴史遺産の宝庫・クリミア半島南部に訪れた危機
ウクライナ文化省によるとクリミア半島の美術館および博物館には、貴金属を用いた文化財が多数収蔵されている。アート・ニュースペーパーは、ロシア軍がこうした金銭的な価値が高い文化財をほぼ全て持ち去る計画だと分析している。
文化財保護上とくに重要な拠点として、クリミア半島南端のセバストポリの街に位置するケルソネソス博物館保護区が挙げられる。さらに、半島南端のセバストポリの一帯は古代ギリシャ文明の重要な遺構が集中しているほか、半島東端のケルチ地域に目を移せば、金、宝石、古代の貨幣などを収蔵するケルチ考古学・歴史博物館が立地している。