日本の男女の収入格差は、先進国で断トツのトップ
ジニ係数で0.4を超える富の格差は「危険な状態」と判断される hyejin kang/iStock.
<不平等度を可視化する「ジニ係数」で見てみると、日本の男女間の収入格差は常軌を逸したレベル>
ジニ係数という指標をご存知の方は多いだろう。分布のズレの大きさを可視化する指標で、「人口の上では○%を占めるに過ぎない富裕層が、国内の富の△%を占有している」といった現実の不平等度が、0.0から1.0の範囲の数値で表される。
近似していて然るべきにもかかわらず、現実には大きく隔たっている分布は数多くある。例えば、有業男女の収入分布だ。やや古いが、2012年のOECDの国際成人学力調査「PIAAC」から、フルタイム就業者(15~65歳)の年収分布を取り出せる。日本のデータを見ると、上位25%以上の割合は男性では48%であるのに対し、女性では17%でしかない。その一方で、女性では最下層のグループ(下位10%未満)が25%を占める。
同じフルタイム就業にもかかわらず、年収の分布は男女で大きく異なっている。この程度をジニ係数で数値化すれば、収入の男女格差のレベルを測ることができ、国ごとの比較も可能になる。その方法を説明する。
<表1>は元データだが、6つの階層の分布(相対度数)は男女でほぼ逆となっている。男性は高収入層の比重が高いが、女性は低収入層が多い。同じフルタイム就業にもかかわらず、この違いは驚きだ。賃金に性差があるのに加え、女性には家事や育児等の負荷があるためだろう。
右欄の累積相対度数は下位からの数値を積み上げたものだが、これをグラフにすることで、年収分布のズレの大きさが視覚化される。<図1>は横軸に女性、縦軸に男性の累積相対度数をとった座標上に、6つの階層(G1~G6)のドットを配置し、線でつないだものだ。この曲線をローレンツ曲線という。
横軸と縦軸、すなわち男女の年収分布のズレが大きいほど曲線の底は深くなる。ジニ係数は、この曲線と対角線で囲まれた面積(色付き)を2倍した値で,極限の不平等状態の場合は、四角形の半分(0.5)を2倍して1.0となる。逆に完全平等の場合,曲線は対角線と重なるのでジニ係数は0.0となる。現実は、この両端の間のどこかに位置することになる。
<図1>は2012年の日本の現実だが、色付きの面積は0.238なので、ジニ係数はこれを2倍して0.476となる。一般にジニ係数は0.4を超えると、偏りが大きいと評価される。富の格差のジニ係数が0.4を超える国は、暴動が起きかねない危険な状態と判断される。ここで出したのは男女の収入格差のジニ係数だが、日本のそれは常軌を逸して大きいと言っていいだろう。