最新記事

北朝鮮

北朝鮮のミサイル実験が止まらない──もっと怖い北朝鮮の誤解と「新・核戦略」

2022年11月7日(月)10時25分
ジェームズ・アクトン(カーネギー国際平和財団核政策プログラム共同責任者)/アンキット・パンダ(同シニアフェロー)

北朝鮮が核戦力の整備を進めていることを考えれば、米韓の動きは理解できる。しかし、それにより実際に北朝鮮の脅威を減らせるのか。

その点は疑わしい。この状況下では、北朝鮮が誤解により核兵器を用いる危険が無視できないのだ。

アメリカは通常兵器による戦争を始める場合、まずは北朝鮮の通信機能を破壊しようとするだろう。北朝鮮の通常戦力を弱体化させることが狙いだ。

しかし、北朝鮮にしてみれば、金正恩と核戦力部隊の間の通信網を破壊することを目的とした攻撃だと誤解しても不思議でない。そうなれば、金はまだ指示を出せるうちに核兵器を使おうと考えるかもしれない。

加えて、米韓が通常兵器で金の居所の近くを攻撃すれば、金は自分を殺そうとする試みだと解釈する可能性もある。

その結果、直ちに核攻撃を指示しないまでも、自分が殺害された場合には核兵器を使ってもよいという許可を軍幹部に与えるかもしれない。

北朝鮮が話し合いに応じる意向をほとんど示さない現状を考えると、米韓はリスクを軽減するための措置を一方的にでも取るべきだろう。

北朝鮮の指揮命令系統に対する攻撃を放棄することも1つの選択肢だ。そうすれば、北朝鮮の通常戦力の能力は高まるだろうが、意図せずに核戦争を引き起こしてしまうリスクは大幅に減らせる。

韓国政府は、必要とあれば金を殺害できる体制を整えることに意欲的である、という姿勢を再考すべきだろう。せめて、金の命を直接狙う可能性を強調することは避けるべきかもしれない。重要なのは、あくまでも北朝鮮の攻撃に比例した対応を準備することなのだ。

From Foreign Policy Magazine

20240528issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月28日号(5月21日発売)は「スマホ・アプリ健康術」特集。健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領死亡、中東の状況注視する=林官房長官

ワールド

イラン大統領と外相が死亡、ヘリ墜落で 周辺諸国が弔

ビジネス

日本KFC、カーライルが1株6500円でTOB 非

ワールド

インドネシア、25年経済成長予測引き下げ 財政赤字
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中