「加盟国に決断求める」シンガポール外相 ミャンマー問題で手詰まりのASEAN
ASEANの対ミャンマー政策はどうなるか? Willy Kurniawan - REUTERS
<軍政によるクーデターと民主派弾圧が続く彼の国に隣国が打つ手はあるか?>
東南アジア諸国連合(ASEAN)によるミャンマー問題への和平・対話の仲介工作が暗礁に乗り上げている。ミャンマーを含めた加盟国10カ国の間に厳然と存在する仲介に向けた温度差がその主な要因だ。11月8〜10日にカンボジアの首都プノンペンで開催予定のASEAN首脳会議と関連会議に向けた加盟各国の外務省担当者による事前交渉でも、難しい意見の集約が進められている。
これまでASEANはミャンマー問題の解決に向けて、2021年4月のASEAN緊急首脳会議で採択された議長声明の「5項目の合意」を共通プラットフォームとしてきた。ところが、今ではその有効性に疑問を示す加盟国が増えてきたことも「全会一致」「内政不干渉」を掲げるASEANの結束した対応策打ち出しを困難にしているという実状がある。
シンガポール「困難な決断すべき時」
11月1日、シンガポールのビビアン・バラクリシュナン外相はASEAN円卓会議で「ミャンマー問題はこのままでは今後数十年間にわたって続く可能性がある。このためASEANは困難な決断をする時が来た」との見解を示し、今後2週間の動きを注視するとも述べた。
ミャンマーでの2021年2月1日の軍によるクーデターで、アウン・サン・スー・チー氏率いる民主政府が打倒された直後から、シンガポールはマレーシア、インドネシアと並んでミャンマー軍事政権への厳しい姿勢を表明。軍政への批判を続けてきた。
2022年になってもミャンマー軍政が「5項目の合意」のうちの「即時武力行使の中止」と「全ての関係者とASEAN特使の面会」の2項目について拒否し続けていることから、ASEANの一連の会議にミャンマー軍政の代表を招待しない状況が続いている。
11月のASEAN首脳会議にもミン・アウン・フライン国軍司令官を招待する予定はなく、9カ国の首脳会談となる見通しだ。
マレーシアが民主勢力代表招致に前向き
こうした手詰まりの状況を打開すべくマレーシアのサイフディン・アブドゥッラー外相は、ASEANの一連の会議に軍政代表ではなく、軍政に対抗して武装抵抗闘争を全土で展開している民主派勢力の「国民統一政府(NUG)」の代表を招致するべきだとの姿勢を明らかにしている。
これは事態打開の一策として注目されたが、10月27日にインドネシアの首都ジャカルタで開催されたASEAN特別外相会議では引き続きミャンマー軍政に「5項目の合意」の履行を求めていくことで意見が一致。マレーシアによる「NUG代表の招致」は議論されなかったという。